「あ、あー! 誰か出てきたわよ!」
「って、あれ、仁王君じゃないじゃない!」
「誰よあいつ」
「わたし知ってる!」
「誰だれ!」
「あいつはぁ」
キャンキャン、犬のような轟音を出し続ける彼女達に苦笑しながら、私はクラスメイトである彼女らグループの一人に近付く、目の前に立つとポカンとされ、徐々に凍てつくぐらい力強い目力で睨まれる。
こわいなぁ、睨まないで欲しいよ。
「なによっ」
「…あのね、中は今お楽しみ中だから騒がないほうがいいんじゃないかなあ?」
「……は…?」
「だからねぇ、今中ではお楽しみ中なんだってば、あんまり騒がしくしないほうがいいよ?私も仁王君に不機嫌そうに睨まれて出てきたんだよ、五月蝿いって怒られるかもねぇ」
「な、なにを、なにを言ってるの!」
頭に血が上ったように怒りっぽくなった彼女を尻目に彼女の隣にいる女の子達に言う。
皆校則違反のお化粧をして綺麗な姿を保っている。ナチュラルメイクなんて殆どいない、日差しでも気にしているかのようなガッツリとしたメイク。
香水の臭いも凄まじくて、よくみんなで集まっていられるよな、と思えるほどだ。
「仁王君は今、女と遊んでいるんだって言っているんだよ。にしても保健室でなんて情緒にかけるよねぇ。いや、これは蛇足だね、ごめんごめん」
「う、うそ……本当…に」
「あーん、また恋人作ったみたいじゃん、仁王クン」
「雅治がとられた!相手は誰よ、誰よ!」
「よくは見てないよ、でもそうだねぇ。あの髪型は柳君が好きそうな黒髪だったかな」
彼女達の爆発的な悲鳴が耳に心地よくなっていく、恋は盲目なってよく言ったものだよねぇ。私だって黒髪だっていうのに、髪の毛を結んだぐらいで分からなくなるだなんて
「でもちゃんとは見てないから、見てみたいんだったら保健室のドアを開いて覗いてみればいいんじゃないのかなあ?別に内側から鍵が掛かっているわけじゃないんだろうからねぇ」
じゃあねと手を挙げて彼女達の前を通り過ぎる、彼女達の視線は保健室のドアに釘付けされている。
もう私なんていらないよねぇ。
階段を降りながら髪をほどいて、癖にならないように手櫛ですく
さて、これからどうしようかなぁ。
なんて、嘯いてみたりして
(20110804≠そんなの騙してみたら分かるだろう?)
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