起き上がったのはもはや昼間だった。
頭から血が出てきてもおかしくないぐらいぼっこぼこにされた私は、すうすうと寝ていた丸井君がどこかに(たぶん丸井君家)運ばれていくのを目撃しながらベットの上に倒れ伏していた。
混濁していく意識の中に千円札が頭の上にのせられたような気がしただけで実際起き上がってみたらなにもなかったのだけれども。
ともあれ、学校確実に遅刻である。
どうしよう。
どうしよう……。
まさか、こんなことになるだなんてなぁ。
昨日の私に告げ口出来たらとても良かったのに。
服を脱いでシャツを新しいものにする。制服のまま寝ていたため、代えようの上着を羽織ってリビングに向かった。
リビングに向かうと、携帯が粉々になったまま放置されていた。
うーん、どうやら昨日の私はイチゴジャムを食べた後に丸井君に誘われるがままベットに寝て、そのまま寝過ごしてしまったらしい。
誘惑に負けたんだ。
負けちゃったんだ。
これは叔母さんも怒るはずだ、帰ってきたら養っている姪の携帯が粉々になっていて(ついでのイチゴジャムがソファーに山並みになっていて)、その姪が後片付けもせずにベットの上で幼馴染みと寝てるだなんて、私だって怒る。
まあ、だから鉄パイプで打っ叩いてやろうだなんては思わないけれども
叔母さんももういい歳だからなぁ。
柳君に頼んで、いい相手でも見つけてくれれば無茶なことが減ると思うけど。
そんなことを思いながらオーブンに入れたフランスパンを取り、残ったイチゴジャムの山から一瓶取りだしてナイフでフランスパンに塗りたくる。
パクッとパクつくと口の中に甘くとろけるようなイチゴの味が広がった。
舌の下で拡散していく砂糖の甘さ、咀嚼していく度に染みだしてくる仄かな酸味に嬉々しながら小さく笑みを浮かべる。
丸井君が持ってきてくれたジャムかあ、なんだか感慨に浸りたくなるようなものがあるな。
もう一つ、もう一つと指が滑って、フランスパンが真っ赤に染まっていく、それをむしゃむしゃと顎を動かして噛み砕くと、またフランスパンに手を伸ばす、その繰り返しが幾ばくか続いて、私はやがて家にあるフランスパンを全て食べきった。
その間、イチゴジャムの瓶が二瓶消化されたのはお腹が減っていたせいだと誤魔化しておこう。
「さて、ここからどうするかねぇ」
目が覚めるようにとインスタントのコーヒーを淹れて一服しながら呟く
今から学校に行くというのもあれだよなぁ。
新しい制服に着替えたものののる気はしない、サボることにしよう、1日ぐらいサボったところでどうこうなるものもない
上着を脱いでテレビを付ける。
まだ、まだ寒いので外に出るときはマフラーを、か。
外を見ると雪がしんしんと降り注いでいた。まるで綿菓子のようにキラキラ光ながら落ちてくるそれを見ながら、息をついた。
これから、また寒くなりそうだねぇ
(20110614≠弱い人間になにができるのか)
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