誰かの手が細い光を手繰った。
切り開かれる光は私を照らす
うぅと唸るような声が隣からくぐもるように出る。
隣には赤い髪の毛をした彼がいた。まだまだ眠いと目を擦りながら掠れた声を出す。
「なぁに、ねぇ名前どうったの?」
丸井君がいつものように私のベットの中にいた。もはや突っ込むのもめんどくさい、朝起きたばかりだし頭がガンガンする。
―――イチゴジャムの食べ過ぎなのかなぁ。
どんな後遺症なんだと想いながら頭を掻くと鉄パイプ系の棒状の物体が振り上げられたのが分かった。
ブンッと空気を切り裂く音が耳元で聞こえた。
それはもう、無慈悲なぐらいに。
お陰様でいい目覚めだ。脳内の覚醒速度が急激に加速した。
「手前よう。身内のよしみだ、言い訳だけは聞いてやんよ。名前」
奮われた鉄パイプが目覚まし時計を叩き割り、大切に仕舞われていたはずの単電池をカーペットの上に転がす。
圧倒的な破壊力を見せられた手前、なにもすることが出来ない。
この状況から逃げようものなら目覚まし時計と同じように頭が割られるのを覚悟しなければならないだろう。
目を瞑ることも出来ないまま、私は再度睡魔に狙われ追いやられた丸井君を見た。
少しだけ、怨むよ丸井君。
「不純異性交遊ってのをアタシの家でなんでやってんだ?姪っ子さんよぉ」
法文叔母さんは額に青筋を無数にたてながら、ニヒリと口だけで笑った。
口以外の場所が完全に笑っていない。
完璧に絶体絶命のピンチに丸井君は吐息を立てるだけ
これほどに味方がいない状況も珍しいなぁなんて思いながら、今度からは絶対に強い人を相手にする時には味方を揃えてから挑もうと心に誓った。
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