つまりは状況証拠だけなわけだ
じゃあ決定な物証を差し出して貰おうか












パラドックス

















「植太諜花(うえた ちょうか)」

事前情報
それは大切なものだ。
そう思って柳君に数分前問いかけた。植太さんのお母さんは一体どんな人間なのかと。
柳君は物語を綴るように読み上げる



「旧名は烈火諜火(れっか ちょうひ)。女性、三人の娘がおり、今年で40歳。趣味は夫が帰ってくるまでの時間を無意味に使うこと。苦手なことは旧名で呼ばれること。植太徹二とは名前の呼び間違いからの縁らしい。出会ったのは彼女が18歳の時だったというから、もう22年の付き合いになる。社長夫人だが、植太徹二は彼女のことを名前では呼ばない。『おまえ』『あの女』『あれ』が名前のかわりになっている。娘の植太麗子は一際可愛がっていたようだ。入学、卒業、と節目節目では贈り物をしていたらしい。現在は夫に不倫されている」
「夫というと、植太徹二さん?」
「無論だ、まあ彼女らにとってしてみれば日常茶飯事でそこまで気にする様子はないが、植太諜花は植太徹二に不倫をされている」
「やっぱり、植太徹二さんとは気が合いそうにないねぇ。個人的意見だけど」
「俺も彼とは親しくなりたいとは思わない。挨拶程度で留めておきたいものだ」



結局、その後、私達は植太徹二さんの方へと視点が移ってしまい、植太諜花さんについてあまり語り合わなかったのだが、しかしながら、その後で私達が彼女に会った時、私は後悔することになる。
もう少し、私は柳君に問い掛けるべきだったのだ。何故不倫をされ続けているのに離婚をしないとか、そして何故植太さんだけを可愛がっていたのかと。

そうしていたならば、彼女に会った後に疲労感をこれ程にまで感じることはなかったのではないかと思う。
そんなこと、今更ではあるものの、でも、疲れるのだ、それほど彼女はおかしかった。
おかしくなっていたというべきなのだろうか


植太諜花という人物は植太徹二の個人崇拝者であり、彼の下僕と呼んでも差し支えない程の狂信者であった。







  
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