「植太さんの妹お二人はお姉さんの死体が別人であることに気がついていない様子だったから、今回彼女達は関係ないとして、私はやっぱり、植太徹二さんがこれを仕組んだんだと思っているよ」
「………証拠がない、その判断は軽率過ぎる」
「それもそうなのだけどね、しかしながら親族の誰かがこれを仕組んだことは明白だよ、この死体はよくよくちゃんとして見てみると、植太さんと全く似ていない」


別人で――別名だ
そうなるならば、親が気付かないわけがない
いや、あの妹さん達は気付かなかったところを見ると気付かなかったかも知れないか
でも、それでも

「黒子の位置、偽造したのはもう分かりきったことだよ、これ死体が使われたということは親族の内の誰か一人は絶対にこの事を知っていた」
「そうなると、植太麗子の母、彼女が気になるものだな」
「知っていたかどうか、彼女に聴いてみる?」
「それもいいが、少しだけ待ってくれ」
「うん、いいけど、どうかしたのかい?」


柳君は私に確認をとったあと、フラッシュのしないカメラで植太さん(偽物)を撮り、その後に祭壇前のご焼香場に移動する。


「流石にこのまま焼香も済ませないようでは、マナー違犯ではいただけないと思ってな」
「なんだい、それ。今更過ぎるし、カメラを死体に向けた時点でマナーなんてなくなっているよ。もしかして私が言ったこと気にしているのかい?」
「分かってはいるさ、それに気にしてなどいない。しかし式に来たのだ、焼香ぐらい、するべきだろう?」
「まあ、それもそうだねぇ、但し彼女は植太麗子さんではないけどね。名前も知らない憐れな身代わりさんだよ」
「それならば尚更労るべきだ、俺達ぐらいな」
「ふふ、なにをおっしゃる、労る、だなんて思ってもいない癖に」
「お前こそ、憐れ等と思ってもいない癖によく言うものだな」
「生憎性分でねぇ」
「知っている、言う確率は高かったからな」
「おやおや、全く君は油断がならないねぇ」


軽口を叩き合うと二人して息をついた、やはり仁王君みたいに嫌味の連続にならないし、なれない。
こういった軽い嫌み争いは彼とは出来る限りしたくないものだ。

彼の隣にゆっくりと移動すると柳君は持っていたカメラをポケットになおす。
その動作を見ながら、首を擦る。
そして、手を離した

柳君はこちらを見て立ち止まっていた。
その視線を返すと、目をゆっくりとふせて口元を緩めた


「じゃあ、行きますか」
「何処に行くつもりだ」
「もしかしたら地獄の果てになるかもしれない所だよ」
「ほう、では一人では心許ないだろう。俺を連れていってくれ、地獄の果てぐらいならばお前と共に行けるつもりだ」
「ふふ、期待してるよ。ではでは地獄巡りになるかもしれないけれども、彼女の元に向かおうか」


植太さんのお母さん

さて凶となるか、吉となるか





(20110421≠運と天は神に任せて祈りを捧げる)






  
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