二人がすり抜けていく、なんとも独創的なお別れの挨拶だ、まるっと全部聞いてしまってなんだか逆にごめんなさいと言いたくなる程の独り言だった。
いや、違うよねぇ。二人だったから二人言か。

植太さんの妹さん達はどことなくルンルンだ、植太さんが死んでとても楽しそうである。スキップなんかしている。
というか、二人言を聞いているだけでも独特過ぎるキャラクターを持っている二人であるなあ。
あるいみで植太さんなんかよりもキャラが濃いんじゃないだろうか
笑い方も今時の女の子の笑い方とは一線を越えていたし、狂気染みている。
昔、立海にもあんな人達が居たけど、ああいうのって本当に日常出来ていくものなのか。
立海はそう考えると突発的に起こった異変分子みたいなところがあるんだろうなあ。

まあ、それにしてもかなりの歪みようである。聞いている限りでは一般家庭ではあり得ない問題が起こっているようだし、大変なんだろうな。臭いものには蓋をしておくに限るだろう、詮索はしない。



「植太香香(きょうか)、纏香(てんか)の二人だな。植太家では元々長男・長女が跡目を継ぐようになっており、その下に生まれ落ちたもの、つまりは妹や弟となる存在には男女問わずに仮候補者の証である『香』の漢字が名前につくらしい。とはいえ、数百年も昔に盛んに行われていたものだ。今現在では一応、本家だからと引き継いでいるだけだろう。実際に分家はその制度を廃止している」



しかし、あの二人が呼びつけられたとなると今現在氷帝と四天王寺はあの二人がいないことになるな。一週間は学校には顔を出せないとなると、二校とも荒れるだろう。

と柳君はなに食わぬ顔で個人情報を伝えてきてくれる。
植太さんについて調べているとはいってはいたが、まさか家族についてまで調べ済みとは。もしかしたら柳君はインターネットの代わりになるのではないだろうか。聞いたら大体なんでも答えてくれ過ぎるだろう。


「彼女達は植太さんの妹さんなんだよね」
「ああ、二人妹がいると言っただろう。その二人だ」
「そう、それにしては妹って感じじゃなかったけどねぇ」


顔の作りさえ、全然違った。植太さんは植太徹二さんに似ていたが、妹さんとは全然これっぽっちとして似ていなかった。同じ血が通っているのかと疑いたくなるほど、顔の作りが違う。


「植太麗子は見てわかるように父親似だが、あの二人は母親似だから妹とは思えない外見なだけだろう。実際戸籍上は姉妹になる」
「そうなんだ、柳君がいうならそうなんだろうね。因みに彼女達って何型?」
「植太家はみな揃ってA型と聞いている」
「そっか、じゃあ植太さんもA型なんだね」



だからあんなに几帳面なわけだ。机の指紋根こそぎ拭かれていたわけだね、植太さんたらちっぽけないじめの証拠を残さないことに神経をすり削っていたわけだ。笑いが込み上げてくるなあ。

彼女達二人がいた場所に私達は移動した。私が香香さんと同じ位置、植太さんの頭側に位置し、柳君は大体植太さんの唇らへん、纏香さんと同じ位置に移動した。
彼女の死体は代わらず白くて、なんともいえないほど死体である。黒子はちゃんと写真通りに左側にある。

とはいえ、これは正確には間違いだ。植太麗子は写真通り、左側に黒子があるわけでない、むしろその逆右側にその黒子はあるべきなのだ。

水で濡れた時のように、今の彼女の黒子は本来あるべき右側にあるであるべきなのだ、なにせ、死に化粧で黒子の位置をわざわざ隠して逆の位置書き直すだなんて、やる必要がどこにもないのだから。
だって、そんなことやってもなんの意味もない。

それが本物の彼女の死体であったら、の話だが







  
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