「なんでワタクシは文句を言えないのよっ!ワタクシがなにか悪いことしたっていうのかしら?ワタクシは皆のやりたいことをやってあげただけじゃない!やって欲しいことをやってあげただけじゃない!ワタクシは悪くないわ!ワタクシは悪くないの。ワタクシは全然悪くないのよ」


土をガシガシと削るように彼女は叩く。
綺麗なマニキュアが塗ってあるその手で何度も何度も悔しがるように、のたうちまわるように叩く。



さて、じゃあまずはその気持ち悪くて虫酸が走る蛆虫のような間違いだらけの自己愛の塊である自己主張を捻り潰してあげようかな



打ち続けている細い腕を踏みつける。細い腕は私の足で踏まれただけでミシッと音を立てる。
細いなぁ、本当に


「イッ痛い!な、なにするのよ、アンタ!」
「うーん、わからない?腕を踏んでいるんだよ、うるさいし、このままいったら君の手が使い物になりそうだったからね。うん、じゃあ取り合えず私がいいたいこと言うからその口うるさい口を黙らせて、自分愛の自己思考を停止させてくれない?」
「…………ぅうっ!」
「そうそうよく出来ました。可愛いねえ、黙ってればだけどさ。でね」
「うぐぅ……っ」
「………顔あげようか。なんだか気に入らないし、気に食わないから。人とお喋りするときは普通顔を見てやるものだよね。じゃあ取り合えず顔をあげようよ」


その昔斬首刑があった時代の罪人の首の持ち方のように長い金髪の髪を引っ張る。本当に染めてるんだ。びっくり


「これでいい。私も君のことが見えるし、君も私の平凡な顔が見えるでしょう?よかったよかった、じゃあ続けようか。楽しいお話をね」


私は口を開く。
その口からは日本語という言語が出ている
私は日本人だしね


「皆が望んだこと?私は君に苛めてくれだなんて、ましてや虐げてくれだなんて言ったことあったかねぇ。ねえ、植太さん。まるで検討違いにおかと違いだよ、妄想か幻想でも見ていたのかい?私は言った?目障りだからテニス部に関わる奴らを虐めて下さいだなんて、言ったかな」
「そ、そんなのアナタが言ってないだけで」


私の言葉に彼女は狼狽える。当たり前だよねぇ、私はそんなこと願ったことも祈ったことも有りはしないのだから、それに


「じゃあなんで君は君で君を裁かないの?虐めないの?全くもって悲しい人だな、虚しい人だな、自己満足を他人に押し付けるなよ。他者に求めるなよ、君が虐めた理由はその理由ごと君に該当する」




`テニス部に関わる女に制裁を´


何故ならばみんなのテニス部だから。抜け駆けは許されない



それはつまり、テニス部が溺愛していた植太麗子――彼女自身も違犯をしているという限りない事実であった。



「君は自分が愛されたいが故に君が作った規則でテニス部に近付いた女を次々と虐めていった。牽制と称してね。でもそれは限りなく矛盾しているよ。だって君はテニス部に関わった女の筆頭なんだからさぁ!それで文句を言えるなんて腹ならば、それはまた自業自得なんだよって言われてもなんにも言えないよねえ、植太さん」
「ウッグッ」
「ねえねえねえねえ、で?他には?他にはないのかい?君が不満に思うことは?反論は?なにかないの?なにかないの……?言いなよ、全身全霊をかけて君のイイワケを潰してあげるからさ」
「くぅっ!」
「ねえねえ、イイワケっていうものを言いなっていってるじゃないか、それともないのかい?まさかそれだけ?」




頬をペチペチと叩く。
綺麗なファンデーションが粉のようにキラキラと散る。あはは、校則で化粧は違反なんだけどね、一応


女の子は怖い恐い
こんな粉で自分を偽ろうだなんてねえ




「ふふふ、それだけなんだねぇ。お笑い草だね、だからやり返されるんだよ。脳ミソの中にシワが一つもないんじゃないかな?」
「なんではじめて会ったアンタにそんなこと言われなくちゃいけないのよっ」




なんで?
なんでってそれは


「君が本当に無様で滑稽だからだよ。無様で滑稽だから今まで見下していた奴らに見下される」



私みたいなやつにも同情的言葉を言われて虐げられる
全部君が私利私欲に走ったせいだよ



「ねえ、本当はもっとあるんでしょう?もっと言いたいことがあるんでしょう?言ってみなよ、喋ってみなよ、叫んでみなよ、まるで戯れ言になるだろうけど、まるで譫言になるだろうけど、可哀想な君のために私だけは聞いてあげるから」


植太さんが顔をあげる
泣き腫らした赤い目が綺麗だったはずの顔をぐちゃぐちゃに濡らしていた。
でも、私にしてみればこちらの方が可愛いと思うんだけどなぁ



「なんなのよ……、アンタは」


泣き腫らした目でヒクヒクとしゃっくりのように震えながら、言葉を出す彼女に私は頬を上げながら答える、簡単だよと。


「一般人だよ、名も無きものだ」


そのときの私を見る目はとてもいい目であった


まるで私に救いを求めるような目だったからだ



可哀想な人、一般人はヒロインを救いはしないのに

ただ、見守る

それだけなのにねえ






(20110122≠一般人は嘲笑う)




  
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