「……ほう、随分とご執心のようだね。ハハハ、柳君に見初められるとは珍しいお嬢さんだ、少し興味があるね」
「名前に手を出したらいくらあなたでも傷じゃあすみませんよ」
「おや、それは怖いものだ。あまり大切にし過ぎやしないかな柳君。過保護なのは親だけで十分だろう?」
「ええ、そうですね。しかし過保護などではないですよ。名前に手を出したら傷じゃあすまない、本当のことです。それに親が過保護だなんてあなたをみていると信用出来ませんしね」
「おや、これは手厳しいな。でもまあ、その通りだ、親が皆がみな過保護等にはなれないものだよ。可愛くない子供だった場合なおのことだ、私は昔から子供が得意な方じゃなかったものだからね、尚更過保護にはなれんよ」
「それは言い訳でしょう」
「言い訳でも立派な理由だろう、柳君」


柳君はひっそりと眉を潜める。
呼吸も少し浅くなり、表情には落胆の色が伺えた。
どこか残念そうにした彼は植太徹二さんから視線をずらし、持っていたカバンから一枚の封筒を取り出した。


「―――子供が得意ではない貴方には嫌いな場所かも知れませんが、学校側から預かってきました。どうぞ」


そういって白い封筒を植太徹二さんに渡す、植太徹二さんは芝居掛かった演技で頭を振るとニヤリと笑った。


「これはこれは、まさか葬式に持ってくるとは思わんだな、しかも君が持ってくるとはな。学校側も人手不足と見える」
「これは公になれば処分されかねない書類ですからね、先生等がきて渡すだなんて不審に思われ兼ねませんから。今日は警察も来ています。生徒の方がバレないであろうという学校側の処置ですよ」
「ほう、まあ、そう考えがあるだけでも畳重だな。ありがたく受け取らせて頂くとしよう。おい、これを私の車に置いておけ」
「………はい」


徹二さんが受け取った封筒はすぐ様後ろに控えていた彼女、従業員さんに渡り、彼女は高いアルトボイスで答え低くお辞儀をしてこの場から去っていった。

植太徹二さんはそれを見送ると、もう一度こちらを向いて媚びるような目付きで見てくる。


「どう思いましたかな?」
「どう、とは?」
「柳君に聞いているわけじゃない、お嬢さんに聞いているんだよ」


柳君はぐうの音も出さずに黙りこんだ。イライラはしていないらしい、凄く大人だった。

――……一緒に来ているのが丸井君じゃなくてよかった。
彼だった場合壊れてなくても壊れていても背負い投げをパーフェクトで仕掛け兼ねない。





  
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