…ん?
……ホクロの位置?
………なんで、ホクロの位置が違うんだろう。
だって、私は確かにさっき、『植太さんと同じ』だと表現しなかっただろうか。

記憶のページを読み返す。記憶力はさほど自信はないがさっきまでの記憶なのだからと否応なしに引っ張り込んでみた。

詮索中
詮索中
……。
………!

やっぱり、同じと表現しているんだよね。
どうしたことだろうか、むうと唸ってみた。

私の表現が間違いなのもしれない、取り敢えずもう一度確かめに行こうと、振り返って歩く。

さっきから行ったり来たりを繰り返しているような気がするが気のせいじゃないんだろうなあ。
一歩、二歩と進む。
足は先ほどから立ってばっかりなのがよほど辛いのかじんわりと痛むような強さで足を刺激した。


「…っ…―――待て」
「あれ、柳君?」


何故か歩を進めようとしたら柳君が腕をがっちりと掴んでいた。
どうやら走って私を追い掛けて来たようだ、肩で軽く息をして額から微量ながらも汗が流れていた。

しかし流石は柳君だ。柳君がいた場所からここは十メートルから二十メートルほど離れているはずだが、それでもかなりの高速度で私に近付いていていた。

でも流石に少し焦っている。
なんだか、少し優越感が胸の中に広がった。


「どこに行くつもりだった?」
「棺を見に行こうかと思ってね」
「………そうか」


柳君は息を乱していたのを整えて、落ち着きを取り戻すように私を見る。
そして私の腕をもっと強く握ると汗をぬぐった


「どうかしたのかい?」
「…いいや、なんでもない。気にしないでくれ」
「そう?」


焦っている様子の柳君を見れたのは二回目だったため、私としてはそれだけでお腹いっぱいだ。
服のポケットから黒いハンカチを取り出して汗を一緒にふくと柳君は眉を少し潜めてその後ありがとうとふくのを容認してくれた。


「というか、あれ? 話しは終わったの?」
「…いや、終わってはいない」
「お話の途中で出てきちゃだめだよ、柳君相手の人に迷惑かけちゃ駄目だ」
「………」
「? どうかした?」
「いいや」


彼の額からハンカチを下げると彼の日本人形のような髪の毛が揺れる。
揺れた先の髪の毛の先に緩んだ笑顔を浮かべていた


「お前に久しぶりにたしなめられたと思い至ってな」
「たしなめるってそんなんじゃないよ。注意しただけだ、それに」


横目で彼の隣を見ると彼もそれで分かったのか、私と同じように横目で見る。


「お相手がお相手だから、ね」


柳君は目を伏せるように低い声を出す。
別に怖いことを言っているわけではない、ただ少しお相手に近すぎてむやみやたらに大きな声で喋れないだけだろう。

小さい声のため聞き取り安くするように柳君が近寄る、今日はなんとも得をする日だ。
柳君の美人さんな顔が近くで拝めるだなんて
まあ、嫉妬で刺されるのが怖いから人に自慢は出来ないは難点ではあるかもしれないけど


「そんなに気難しい人ではないぞ」
「それほど気安い人でもないみたいだけどね」
「遠慮することない」
「恐縮しているだけだよ」


肩をすくませて後ろ去ると腕を更にぎゅっと持って引かれた、ピーク時よりは小さくなってしまったという身長の背比べが出来る程近付き、彼の手は腕から離れて、絡み付くように私の手と結ばれる。

所謂恋人繋ぎだった


「では、行こうか」
「なんだか今日は大胆過ぎじゃないかな?」


結ばれた手を見ながら言うと笑いを含む口調で柳君が諭すようにいう。


「そのぐらいじゃなければお前は一緒に来てはくれないだろう?」
「よくお分かりのようで嬉しい限りだよ」


諭されてたまるものかと微笑んでみせると柳君は持つ手の絡まりを深くする。

うぅ、最悪だ、握られて出来てくる汗が彼に伝わっているだなんて思うと心の底から手を拭かせて欲しいと頼みたくなった。


柳君を見る。
彼は何処吹く風で繋いでいることを意識していないかのように颯爽と歩いていく。


私は汗で湿っていく手を気にしながら彼の横を歩いた





  
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