アナウンスが響くと、会場全体が合掌をする。

植太さんのお母さんのお別れの言葉で一通りのプログラムはすべて終わり、その後はすぐに自由行動になった。
まず、親戚一同がお見送りの為に玄関口に行き、お別れの挨拶をする為にお客人達が玄関先に向かう

植太さんに最後のご挨拶をする為に私は椅子を立った、植太さんに挨拶に向かうのは私を含めても少なく、隣にいた柳くんは情報収集の為に親戚の方に行っている。


友達いたんだろうか、植太さんって。
周りを見ても、私と同じような骨格をした人間は見当たらなかった。
女子生徒が見当たりませんなあ。


一応、テニス部の元ファンクラブ会長だったんだからいじめられていても、一人ぐらいはついてくる人間はいるとは思ったのだけど、そんな人物は思い当たらないし、見当たりもしない。
人望がなかったのか
それとも人材がなかったのか

まあ、ついてくるような人間がいたら私なんかに手助けを求めないか。
いやはや、そう考えると植太さんもとことん運のない人だよねえ


花が左右対称にあるこの会場のど真ん中を突っ切るようにして歩いた、途中紳士淑女の皆様が私の横を横切っていく。
どの人も、植太さんの友人というよりは、植太さんのご両親の仕事仲間といった感じだ。


当然のように死体の顔を拝みもせずに出口の方へと急いでいくその列はなんの為にここに来たのか聞きたくなるような列であった。


お焼香が漂う親戚席の前、お焼香場所に来て抹香を右手の親指、人差し指、中指に取った。
持った抹香を目元の上に持ってきて軽く拝むように頭を下げる、下げた後に香炉に入れ、数珠を持って手を合わせる。


「右ほとけ 左われとぞ 合わす手の 中ぞゆかしき 南無のひと声、か」


この会場にはこの古歌を知っている人間がどれくらい居るのか、考えると笑いが込み上げる。
私よりもお年を召した方達は御高名でいらっしゃるが御高明ではいらっしゃらないらしい。

私の隣では女性が左手で抹香を掴んで香炉に入れている、手のひらを合わせて拝みをご焼香前後にしていないことから、お葬式に来たことがない人なのかなと予測をたててみた。


当たっているといいねえと思いながらその女性の横を通って、親戚席の前に向かう。そこにもお線香とお焼香をする場所があったが、一回やってしまったので、二回目をやらずに祭壇に近付いた。


祭壇にはたくさんの花が敷き詰められており、極楽を表す蓮の花が綺麗に咲き誇っている絵が絵が描かれていた。
祭壇の中心部には写真が飾られており、立海の学生服が写真から少しだけ見えていることから、集合写真などを切り抜き拡大させたものなのだと思っておこう。

写真に写っているのは、化粧をバッチリ決めて、笑っている植太さん。
髪はクルクルと何時もの通りに巻かれており、ふっくらとした唇が印象的である。左目元には大人ぽいホクロがあり、私が初めて会ったときと同じ様な姿であった。

この写真、この頃撮られたやつというわけか。
こないだ、修学旅行があったばかりだし、写真が困ることはないよねえ。

だが、修学旅行といっても植太さん自身はすでにその時はもういじめを受けていたはずなのだから、彼女にとっては苦い写真だろうに
子供の心、親は知らず。
なんてね






  
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