まさか、可愛い等と言われるとは
しかも、恋愛云々、女子のいさかい云々に全くと言っていいほど興味がないと言われているあの参謀である柳君に言われるだなんて
さらに驚くべきことに嫌々ではなく、本格的にそう思ってである

彼は屈んでいた足を立ち上がらせ、私を高いところから撫でる。
ついている片手は使おうとはしないが、片手で猫が撫でられる時のように優しく丁寧にされる。
壊れ物を扱うのように扱われた、私は壊れた者なのに、矛盾していると秘かに思った

まったく、敵わないなあ、彼には

きっと彼は分かってやっているのだろう、私がこうやって撫でてもらうことが結構気にいっている行動だということを
そして、私が壊れていることも



「可愛いと言われるのは嫌か?」
「……慣れてないんだ、平凡って言われるのは慣れてるんだけどね」
「勿体無いな、こんなにお前は可愛いのに」



天然タラシだこの人
しかも自覚がある天然タラシ
悪意しか感じられない
というか悪意の塊だ

眉間に眉を寄せてみると片手で皺を伸ばされた、心なしか楽しそうである
やられている私としてはその楽しさがあまり理解できない。確かにやりたくはなるのだが、女の子にやっちゃ駄目じゃないかな



「それやっていて楽しい?」
「一回、やってみたかったんだ。よく弦一郎が眉間に皺を寄せているからな」



柳君の頬が緩む、彼はやはりテニス部のこと、特別に思っているのだろう。
信頼というか、信用というのか
とりあえず、私に一生持ってはくれない感情を彼はテニス部に持っている。

私はそんなことさえ、あまり良くは思えない。
軽い嫉妬さえしている。
テニス部という団体にだ
まったく、私も厚顔になったものだと思う、自分が自分で嫌になる。
なにを――息ずいているのやら。
壊れた私にそんなことしていいとでも思っているのだろうか。
嫉妬だなんて、そんな普通の人間らしいことを

大体、彼は私の本当の彼氏様じゃない。
偽りの、偽造の
恋人ごっこだ



「答えになってないよ、柳君。楽しいの?」
「ああ、お前だから楽しい」
「……、柳君」
「ふふっ、すまないな、お前が期待させるから意地悪してしまった。お前も悪いんだぞ」



柳君は目を細めて幸せそうに笑った。
そうされるともはや何も言えない。
私は困りながらも笑ってみせた。


彼は、それさえも計算どうりであるとでもいうように私の頭を撫でると、ズボンのポケットから包帯を取り出した。




(20110221≠事件からというのに静けさ漂い)





  
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