理解という思考回路は欠落している
認識という危機回避する
志向回路も停止している
君が知っていたのは世界の一つでしかなかった
世界は無情である
君は知っていただろうか
パラドックス
植太さんが死んで2日がたったが立海はいつもの通り騒がしい日常を過ごしていた。
誰も変わることなく
誰も代われることなく
誰も替わることはなく
誰も換われることがなかった
一人がかけただけの壊れた生活をおくっている。
皆みんなで
ちなみに植太さんの机は人間が使えるものではなかったため学校側が処分したらしい。植太さんの周りの机もドタドタと壊れて、ドアも半壊していて植太さんのクラスの担任は踏んだり蹴ったりだ。
虐めを黙認していた報いというやつであろう、いい気味だと植太さんがいたならば毒づいていただろう。
彼女はもはや生きてさえいないから言葉など言えるはずもないが
とりあえず、いつもの通りの日常である。
――――植太麗子
彼女のやったことはまるで彼女の意思とは無関係にことごとくとして捻り潰されてしまった。
その一、彼女の自殺はなかったことにされた。
これはご両親との合意の上らしい、大手化粧メイカーの社長である彼女の父親は、娘の自殺で会社の評判が傷付くことを恐れて学校側からの提案に乗った。
立海大附属は壊れたあの日から評判が著しく低下しており、それに加えて虐めによる自殺だなんていう学校崩壊ものの事実がプラスされてしまえば取り壊しということにならざるを終えない、しかしながら大学院まである学校だ、職員、生徒、合わせて四千人は越える大所帯、そう簡単に潰すわけにはいかない、学校側は植太さんの両親にマスコミにリークしないかわりに売店等での化粧品の一部販売を許可した。
高校、大学生を向けて販売さている植太さんの両親は易々とそれを了解し、自分の子を立海とは遠く離れた沖縄辺りに転校という名前を使って姿を眩ませることにしたという。
まったく、両親という血の繋がりというものは絶対的に信用出来ないものだねぇ。
それにしても植太さん、家族にも裏切られるとはどんな家庭内をしていたのだろうか、かなり劣悪な家庭内事情があったのかもしれない、見てみたいものである
その二、植太麗子が死んだということは朝早くから来ていた数人しか知らず、知っていたとしても箝口令が出されており(学校側からの退学などの圧力)、私もその一人なのだが口外させてもらえない。
つまるところ「植太さんは立海の井戸の中で自殺したんだって」と誰一人として伝えることが出来ない。
植太という名前さえ、不用意に出すことは憚れている。担任の先生であれ、朝早く来すぎていた生徒であれ、人生では珍しく平等に。
そんな学校の裏事情になってしまった植太さんのお葬式は音がないのではないのであろうかという程静かに取り仕切られた。
そんなお葬式に私は来ている。
学生服を身に付け、黒い喪服を着付けて安いお涙を浮かべる彼女の親を素通りする、会場に足を踏み入れると二三人知っている大人が忙しく私の横を横切っていった
式に来ていたのは学校関係者とあの日早く学校に来てしまった学生の中の、人情というものがまだ抜けていなかった人間達。
まだまだ社会復帰が期待出来そうな人達
常識がまだ頭にある人達
つまるところ、人間として終わっていない人達だった。
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