「………えっ?」


起き上がると暗い保健室のベットの上、時計をみるともう11時

痛い頭に手を置くと、ジンジンと痛くまるで殴られた後のようだった。
ベットから起き上がり、立ち上がると黒いハンカチがペタリと床に落ちる。切り刻まれていたはずのハンカチがちゃんと存在している。
あれ?
さっきまでのは夢、だったのかしら?

そうだったのかもしれない。

だって、仁王雅治という男はあんな性格じゃ全然なかったはずだもの。
壊れてなんか、いないはずなのだもの


「最後の夢だからってあんなにしなくてもいいじゃない」


夢は願望を写し出すものだという、ワタクシはまさかあんな雅治を望んでいたのかしら?
壊れた、返りたくない過去のようなようになって欲しかった?


「そんなわけないわよね」

首をコキッと鳴らすと夢うつつだった私の意識が覚醒する。ハッと保健室のドアを見る。鍵が外側からかけられていた、ひやりと汗が出た。
そう11時、もう夜なのだ。学校には誰もいないに決まっている。つまり、鍵も、学校を出る為に必要なカードもない。
セキュリティは神奈川で高いレベルのものだという立海大付属はこの時間帯に学校を出る為にはカードがなければ自失的に不可能である。


「……ま、調度いいですわね。どうせ、死ぬのに変わりはないのだから」


家に帰るつもりはない。
今日中に死ぬつもりだったし、誰もいない夜中に死ぬというのも噂になりそうで大変いい。
ワタクシを虐めた奴らを呪ってやる、なんてね
こんだけ言えるだなんて、やっぱり死ぬと思うと気軽になる。


ワタクシはトボトボと歩き、保健室のドアに手をかける、鍵を開けて、横にスライドさせる。
ドアを開けると見馴れた廊下、見馴れた校舎。


鞄は教室にある、取り敢えず教室に帰って考えるとしましょう。

ああ、そうだわ、遺書も書きたい。恨みつらみを綴るのもいいし、喜ばしかったことを綴るのもいい、立海の連勝の時に感動を書き連ねてもいいし、怒ったことを書きなぐってもいい。


生きてきた時期よりも
死に行く今のほうが楽しい。

それは感情が麻痺しているなのかしら
それとも感情さえ麻痺しているからなのかしら

生きていた今より、死んでいく今の方が楽しい。



そうだわ、死に場所はあの井戸にしましょう。
あの井戸、曰く付きのものなのよ。
ワタクシがそこで死ぬことで益々曰く付きになっちゃうわよね


そう思いながら暗い教室への階段を上る。階段を一つ飛ばしに跨ぎながら暗い校舎の中を歩く。



最後の階段を上るとすぐそこに教室があった。







  
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