「じゃあ、その証拠って?」
「……立海テニス部にはファンクラブがあるわ」
「うん、君はその元会長なんでしょう?知っているよ」


元というのを強調して言うとわずわらしそうに植太さんは私を見る。どうやら彼女はファンクラブという役職に誇りを持っていたらしい。
誇り、ねぇ
そんなの溝に捨てても誰も気がつかないモノだっていうのに

難儀な人だなぁ



「そしてそのテニス部ファンクラブはテニス部に近付くものを会員として入れるのが掟なの」
「あれ、そうなの?知らなかったな、そんな掟あったんだね」
「ええ」

植太さんは神妙な顔をしてコクリと深く頷いた。


テニス部に近付いたものにはファンクラブに入れさせる。そうか、それなら牽制も取りやすいし、近付いていった人は何もすぐには虐められなくなる。


幸せだった立海。
それはそうやって作られていたのか

まるで平和条約のようなその行為
作られた平和
均等の取れた条約
崩れる、前

今じゃあ守られることさえない、昔のもの


「ワタクシは会長になって三十四人、そうやってファンクラブに入れてきましたわ。ファンクラブは元々大所帯のグループ、三十四人、一人ずつ入れたら別に差ほどとして注目にはならなかったわ。でも」


彼女は目を伏せる


「ワタクシはある二人に、クラブを入るようにと説得したことがあったわ、その頃は立海テニス部は全国大会優勝を逃してしまって、憤りと悲しみがうずめいていましたわ。だから、そんな大切な時期にテニス部に近寄った二人に苛立ちを感じながら説得していましたわ」


彼女は何を見ているのだろうか。
下を向いて、過去を辿る思考よりも目線の方が気になった


「でも、その二人は首をけして縦にはふりはしなかったわ、だからワタクシは警告として、屋上へ呼び出したの」
「それが証拠とどう繋がるの?関連性が気ほどないように思えるのだけれども」
「……彼女達はそれでもテニス部に近付くのを止めませんでしたわ。ワタクシは二人を虐めることにしたの。平凡のあの女がテニス部に近付いていくことはもちろん憎かったし、それに許せなかった、だから徹底的に潰したわ」
「だから」
「でも、あいつは、あいつらは、いるのよ」


私のだからなにという言葉を遮り、植太さんはいった。
武者震いのように彼女の唇は震える。
それを抑えるようにして彼女は唇を噛む、ピンク色の口紅はもはやあるとはいえないものになっていた


「いる?」

いるって、黒幕が?
ラスボスがいるとでもいうのだろうか
漫画のキャラクターのように


「そう。昨日だって、今日だって、明日だって、テニスコートにいるんですのよ、あんなに虐めたのに、いるんですのよっ?!」


ギョッとして後ろを振り返る。ここからはよくテニスコートが見渡せないが、彼女がいう通りだと考えれば、そこにいるのだろう、その二人の危険人物は


「いるの!いつもコートの中に!マネージャーでもないのに、いるのよ?!何故いるの?おかしいじゃない。王者立海は、ワタクシ達のテニス部は!女をテニスコートに入れるほどの酔狂なことは絶対にしませんわ!」


それは、今までの鬱憤のようなものだった。
彼女は私に向かって言う
まるで、皆が見えていない幽霊の存在でも主張しているかのように





  
戻る
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -