ちなみに丸井君はたらい回しのように色んな女の子達と一緒に登校しているらしい、私はその状況を見たことがないので分からないのだが、風の噂でそう流れてきた。



でも丸井君のことだから私がそれを見たら、一緒にいた女の子を入院させそう。

いいや、或いは妬きもちでも妬かせようと見知らぬ女の子にキスをするかもしれないな


なんて、全部妄想であることはかわりない。
このまま考えるのも譫言にカウントされてしまいそうだし、嘯きはこれくらいにしたほうがいいだろう。



丁度、保健室についたことだし


保健室のドアを開けて中に入ると、病院のようななんともいえない雰囲気がした。


私はあまり病院の雰囲気は好きではない。というかあの雰囲気に呑まれる人間は精神的にかなりヤバいことであろう。

なんというか、ナイチンゲール症候群でもおかしてしまいそうなあの雰囲気が私には合わないのだ。


ただ、病院の匂いは好きである。あれは、何故か優しい気分にさせてくれる。



まあ、感じ方なんて千差万別。ここで語ることもないだろう。


取り合えず、保健室の中に入るとそこには誰もいなかった。

見渡してもあの高ぶってそうな植太さんはいなかった

「……遅刻かな?」

呼び出して置いて彼女は遅刻らしい。

いいご身分だ、そのまま帰ってやろうかと一瞬思ったが今日みたいに嫌がらせを受けるのは癪に触るというか、正直めんどくさいことになりそうなので、今のうちにやめてもらうように説得しにきたのだ


もしも説得出来なかった場合、三日目には丸井君にバレて病院行きか、今よりもハードに虐められることだろう


別段彼女が虐められようとそうでなかろうと私には関係ないけど


丸井君が―――丸井君が、そんなことで表沙汰になって精神的に困るのは私としては決して赦されることじゃない


あの子はあのまま、可愛いままでいいのだ
ずっと、そのまま、あのままで居てくれさえすれば、いい。


もう一度くるりと保健室を見回すと、やっぱり、誰もいないようだった。

仕方なく私は保健室の椅子に腰かける。
私はグラウンドを見る

男子テニス部が現在アップと言われる準備運動をしていた



その中には黒い肌の彼がいたり
銀髪の彼がいたり
赤髪の彼がいたり
帽子を被った彼がいたり
眼鏡をかけた彼がいたり
遅れてきて怒られているワカメ頭の彼がいたり
それを優しそうに怒っているヘアバンドをつけている彼がいたり
それを微笑ましそうに見ている細目の彼がいたり


そんな彼らの回りに五月蝿い彼女らがいたり


何時もの通り、普通を作られた日常が、そこにはあった。
私はまるでモニターを通して

ブラウン管を通しているようにそれを見ていた。

この立海が壊れる前と同じように

この壊れた立海になる前と同じように


ただ、じっと、唯の時間潰しのために





  
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