放課後ともなると、マンモス校であるこの立海でさえ、教室は静けさに覆われる。

響くのは私の上靴が床の上を歩いていく、コツンコツンという音だけだ。

誰もいない、すっからかんの教室を一つ一つ見て回りながら保健室に近付いていく

静けさを帯びたこの学校の雰囲気はどこか哀愁さそうものがあるだろう。いまにももの悲しいクラシックが響いてきそうである



ここが、王者立海だった場所
ここが、常勝立海大と叫ばれた場所
ここが、壊れてしまった立海



私は息を飲み込んだ。そして、飲み込んだ息をはく。これが呼吸。
私は生物であることを実感していた。



ふと、手を首に当てる。
マフラーに隠されているそこには昨日丸井が締め上げた後が残っている。


うっすらと、ではあるもののそれは自己主張をするかのようにたまにだが痛くなる。


でも、こんなのいつものことだ。
私は首を擦る。




私と丸井君は付き合っていた。それはとても前のことといってもいいかもしれないし、彼にとってみればまだ最近のことだったのかもしれない。


ともかく、私達は付き合って、別れた。なのにまだ爛れた関係といったほうがいいのかもしれないが、彼は私に救いを求めるようにすがってくる。
束縛してくる。

まだ、彼氏であると。
まだ彼氏であると、主張するように


私もそれを容認している。
黙認してしまっている。

どうしても、彼を捨て置くことが出来ない。

それは甘えなのかもしれない
それは裏切りなのかもしれない

まぁ、どちらでもいいか


私は首を擦る。少し、痛い

今日、あの金曜日のなんちらみたいなチェーンソーを持った丸井君は、アメダスの下りのあの三十分後に名残惜しそうにチェーンソーを抱えて帰っていた。

彼は絶対に私と朝を登校しようとはしない。

下校だって、昨日は不安定だったから一緒に帰ったのだが、普段は絶対に一緒に帰ったりはしない。


それには私がファンクラブに目付けられるという理由があるからなのだが、本当のところをいうと丸井君がその目をつけたファンクラブを虐めのように潰ししてしまうのだ

それこそ、虐殺的な暴力によって


まあ、その前に私は一緒に学校に行っていたお友達を丸井君に入院させられるまでぼこぼこにされたという経験があるため、私と一緒に登校してくれる人間などいなくなってしまったわけだが。


取り合えず、私は基本的に一人で登校、下校している

誰一人として、一緒に登校してくれる人はいない

それはいい、私は喋り上手ではないし、さして聞き上手というわけでもないわけだし
一人の方が楽だ。







  
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