「あは」


起き上がると、何故かブン太君が私のベットの中にいた。なんでこの子私の家の中にいるんだろう、というか、なんでベットの中にいるんだろう。



「……ブン太、ブン太、君、なんでこんなところにいるんだい?おーい?」


って、待て待て、おかしいおかしい、彼、制服を着ている。昨日は帰るときに部活の服のまんまだったから、一回家に帰ったのは分かるけど、って、そんなことよりも。

ベットの横においてある(立て掛けてあるというべきなのか)それはまごうことなき、チェーンソーだった。

え、エジソンさん?
あれ、今日は金曜日でしたっけ?


しかも電気チェーンソー。伐採するときに用いられている、アレだ。
私はどう反応したらいいんだろう。
怖がるべきなのかな、こういうのは

私の家にはこんなもの何処探してもないし、反応に困る。


これってやっぱりここで居心地良さそうに寝ている彼のものだよねぇ。
昨日、私の部屋にこんな物騒なものはなかった。



「ブン太、ブン太さん?ブン太君?ブンちゃん?起きてないのかい?」


早く起きてこれを退かしてほしいのだけど。
しかしながら丸井君は起きる気配がない。
しょうがない
近くにある時計を見るとまだ6時になったばかりである。これならば続きの本ぐらい見れるだろう。近くにあった、本に手を伸ばす。
その時黒いパワーリストをつけた長い腕が私の首に巻き付く
「おはよ」
「起きていたようだね、ブン太君」


ブン太君は眠たいと目を擦りもしないで、後ろから頭がひょっこりと出て、抱えられるように抱き付かれる

一瞬たじろぐとそのたじろいだのを感じたのか丸井君が握る力が強くなった。


「良い臭いがするぜぃ」
「そうかな?」
「ああ、美味しそう」
「食べないでくれよ?」


えー、お前美味しそうなのによぃ
などという丸井君。
首に顔を近付けられて、かなり洒落にならない。昔本気で君に噛みつかれて血を出したことがあるのだ


「というかお前、本なんか読もうとしてただろぃ」
「君が起きなかったからね、仕方ないだろう?」
「俺がいるのに本なんか読もうなんて、ムカつく」
「はいはい、じゃあ次からは君だけを見ることにするよ」


彼の頭に耳を置くようにしてもたれ掛かると嬉しそうに丸井君が声を出した。
可愛いなぁ。本当に


「でさ、あれなんなのかな」
「あれ?」
「…チェーンソーだよ」
「チェーンソー?」


あれ?
丸井君が持ってきたんじゃないのだろうか。
でも、そんなわけないよなぁ。だって彼ぐらいしか容疑者はいないことだし


「違うぜぃ、名前。あれは鎖鋸」
「鎖鋸……?ああ、チェーンソーの日本語版のことだね、確かにそうともいうけれど」
「へへっ、よく知ってんだな、名前」
「昔サイコサスペンスホラーに軽い恐怖を覚えていたからね、苦手なもののことは調べるよ」
「偉い偉い」


あれ、これ昨日言ったな。
私が言ったような気がする、柳君に。
彼、昨日どこからどこまで見ていたんだろうか、柳君と私とのことを
……むぅ?


「それで君はなんで鎖鋸なんて物騒なものをわざわざもって来たんだい?」


ブン太君は私の頬に顔を寄せながら、にこやかに笑う。向日葵みたいだ


「今日、使ったからだぜぃ」


チェーンソーを使ったんだ……。
いったい日常生活にどこをどうすればチェーンソーを使う場面があるんだろう、この某テニス部レギュラーの学生さんは


「な、なにに?」
「井戸壊すのに」


井戸
壊す…?


「……まさか、立海大学部にある、あの古井戸のことかい?」
「うん」

立海大付属の大学部の少し外れた場所にある古井戸。薔薇が巻き付かれているその井戸のことだろうか?


「壊しちゃったの?井戸」
「……えへへっ」


はにかまれてしまった

この子器物破損罪ですぐ捕まりそうだなぁ。
そうなったらなにがなんでも阻止しますが


「だってよぃ、柳を壊すわけにもいかねぇじゃんか。で、名前を壊すわけにもいかない。じゃあ、場所を壊したらいいだろぃ」


つまりは、彼並みに柳君と会瀬をやめて欲しいという表現なわけか
柳君はチームメイトで殺せないし
私を殺したら本末転倒だし
そしたら、残った場所を壊すしかない。
そういうことなのだろうか

「これで、お前が俺を困らせる場所はなくなったぜぃ!なあなあ、俺って偉い?偉い?」
「うん、偉いね」
「へへん、だろぃ」
「うん」

頭を撫で回してあげると恍惚という顔をしてこちらを丸井君は見る。
この子も随分壊れてきてる
或意味で私とお似合いというわけか。
いやいや、立海は殆ど私とお似合いか。
壊れたきった私には、ね








  
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