でも目を開けたときのあのかっこよさは素晴らしい。いきなり、開けたときはちょっと恐いけど
ゆっくりと開けられる分にはそうは感じない。


「君の本命の彼女がね」
「……、真理華(まりか)のことか」
「うん、メールの精神攻撃でもうへきへきだよ」
「すまないな」
「別に君が謝ることじゃないよ、私としては彼女が私のことを考えて少しは精神攻撃を止めてくれさえすればいいからさ。………はぁ」
「……ちなみに聞くが精神攻撃ってどんなのだ?」
「『私が悪いんだよ、私が全部悪いの』『だって真理華が悪いんだもの、役立たずだし』……どう思う?」
携帯を取り出して見せてみる。柳君は少し目を細めて「精神不安定だな」と言った。

「これ、私が関係しているわけじゃなくて鹿野裏雪那(かのうら ゆきな)っていう女子知っていると思うけど、その子との仲違いのせいで、私がメールで相談にのっていたらいきなり精神攻撃がだよ。しかも一気に五百通ぐらい。しかも仲直りしたらお役御免ってぐらいに私は捨てられてしまうんだ、『また、不安になったらメールするね』だって。君の本命もう私じゃあ相手出来ないよ。君と別れて、彼女とも別れるから、もう彼女と別れていい?遠縁になりたい」


いきなりペラペラと喋り始めた私に柳君は困ったように肩を上げる。
うむぅ、なんだか大人な対応なんだよね、柳君って


「落ち着け」
「落ち着けない、彼女のせいで私の精神は蝕まれていっている。そして二度と戻らないぐらい蝕まれていっているから、これでまた厄介な事情をプラスされたら私は誰に許しを請えばいいかわからなくなる。それだけは嫌だよ」
「取り合えず冷静になれ、パニックになり過ぎだ」
「パニックになってなんかいな……う、うん。落ち着く、キャラ崩壊しそうだね、いやもうしているのかな、嫌だね、本当に」


空気を吸う。深呼吸、深呼吸


「私はもう彼女達と友達でいる自信がないよ」
「理由を聞いておこう」
「あの人達、怖すぎるよ。五百通は本当に怖いんだ」
「そうか」


柳君は私の頭を撫でる。
うむぅ、やっぱり子供扱いだ。
柳君の優しそうな目がこちらを向いて私を撫でていると思うとむくーとしてしまう私がいる。いやはや、まだまだ私も子供である。彼に子供扱いされたぐらいで拗ねに似た行為をしてしまうだなんて



私は撫でてくれた手を握って彼を引き寄せる。彼はなんだろうかというように私を見る。私は彼の唇に自分の指を触れさせるとなぞるようにしてスライドさせた

彼の唇はふっくらというよりは薄く、でもキスをするには申し分ないほど魅力的な唇だ。
美人さんは特ということか


「ねえ、柳君。私のこと好き?」
「もちろんだ。愛していているよ」
「嘘つき」

彼は本当は篠原真理華さんが好き。私と付き合っているのは私という危険分子を監視するためだ。
それを私も柳君も分かっていて、恋人関係みたいなのをやっている


割り切っている恋愛とでもいうところだろうか


「君は嘘つきだねえ、私なんて本当は嫌いな癖にさ」
「嫌いとは言ったことはない」
「じゃあ嫌いじゃない、普通ってだけ。愛しているわけじゃないでしょう?」
「どうだろうな」
「ふふふ、君は賢いよね。そうところ、私は嫌いじゃない。愛してるよ、柳君。君が私のことを利用している時が一番愛らしい」
「嬉しいことだな」
「そう?それはよかった、柳君が私のことを捨てないように私は頑張るよ」
「じゃあ俺はお前に飽きられないように努力するさ」


ありがとう。そういって彼の頬にキスを降らせる。
リップなんてつけてはいないのでキスマークが残ることはないだろうが衛星的にどうかなと思い、キスしたところを袖口で拭こうとしたら手を掴まれる。


「何をしているんだ?」
「口っていうのは雑菌だらけだからね。唇といえども汚れがついちゃうだろうから」


我ながら乙女もなにもあったものもないが
口には雑菌が多く含まれるのは本当だし、この季節に雑菌が顔につくというのは風邪をひく切っ掛けになりそうだ


「別にいいさ」
「そう?」
「おまえのキスを消すのは勿体無いだろう?」
「口にしたわけじゃないけどね」
「だが、してくれたのにはかわりないさ。俺からもしようか?」
「しなくていいよ、したくないないだろうからね。したくないことは強制しないのがポリシーなものでね」
「そうか」



その後はたわいもない話をした。テストがなくなればいいのにとか、読書が出来ないとか。本当にたわいもないことを、ペラペラと喋った。

柳君は一方的に喋っている私を見て楽しそうにしてくれる、そういうところを見ると、大人だなと思う。
いつも聞き手の私がこれだけ喋るのだから、柳君の聞き手能力は素晴らしいものがあるのだろう。
そう思いながら、私は柳君と別れた







(20110201≠じゃあ、どうやって勝つのか)



  
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