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×××
俺があいつと出会ったのはガムが切れた水曜日のことだった。
真田に追いかけられながら学校中を全力疾走で走っていたとき、丁度廊下で教室から出てきた俺と頭をぶつけてきたあいつは、まるで俺のことなど知らないというように謝りもせず転けた足を擦りながら廊下を駆け足で走っていった。
その後ろから鬼みたいな形相の真田が追いかけていき、俺はそのときあいつが真田が言っていた、広瀬友里であることを知った。
広瀬友里は真田のいとこらしい。顔立ちは真田とは似ても似つかない女の子の顔だった。
俺としては真田のあのがっしりとした顔立ちがまんま女になっていることを予想していたのだが、まったくそんなことはなかった。むしろ、可愛い系の女子だった。
それから、俺はあいつを見るたびに胸がビクッとする病気にかかった。どこいったってあいつを見るとドキドキする病気を仁王に話したら、呆れながら『それは恋じゃなか?』と言われた。
そうか、恋か。
じゃあ俺が持っているこの感情は……恋?
カッーと顔が赤くなって、仁王にリンゴのようだと称されるぐらい恥ずかしかった。
そして俺、丸井ブン太はあいつを放課後教室に呼び出した。あいつはまるでわからないというように口を大きく開いてアホ顔でうんと了解してくれた。
その時の喜びようといったら俺はそれだけで全国大会優勝したような気分になった!
夕方、誰もいない教室で俺はあいつを待つ。
マネージャーであるあいつは後片付けがあるとかで遅れていて、だから俺は静かな教室でうるさい胸の鼓動を抑えながら、あいつがくるのをまった。
コツン
コツン
小さい、靴の音がする。
あいつだと思って俺は息を飲む。そんなに急いではいない、早くもない靴の振動がまるで俺の心音と一緒のように感じられて嬉しくなって少しだけ笑った。
早くあいつ来ないかな。
早くあいつに、気持ちを伝えたい。
そんな感情しかなくて
みっともないぐらい、あいつを思っていた。
そのとき、歩いていた靴の音が止まる。
そして教室のドアの前から深呼吸する音が聞こえて、そしてアイツが入ってくる
「ごめんごめん、待った?」
「………」
「どうしたんじゃ、ブンちゃん。俺が書いた部誌なんかよんで」
「………」
「?」
「な、なん」
「なん?」
「なんなんだよぃ!これは!」
「部誌じゃな」
「部誌じゃな、じゃねぇよぃ!何故こうなった!日付は何処に言ったんだよ!あと、なんで俺が広瀬を好きになってるんだよぃ!おかしいだろぃ!なんでこんなラブコメ的展開から発展するんだよぃ!普通に考えればこの中のあいつ人にぶつかってきて謝りもしない礼儀知らずだぜぃ!?その中のどこで俺はトキメキしたんだよぃ!」
「どっかでじゃ」
「いい加減すぎるだろぃ!」
「どうせ有り得ん空想の話じゃ、別にいいじゃろ?」
「だからって何故部誌にかくんだよぃ!おかしいだろ!全体的に!」
「だってまーくん暇じゃったんだもん」
「お前が言うとキモいんだよぃ、仁王!」
「なんじゃ、つれん奴じゃな。そんなんじゃモテんぜよ」
「うっせいよ!取り合えず消しとくからなこれ、真田や幸村くん達に見られたら恥だ」
「へいへい、明日の担当頼んだぜよ、ブンちゃん」
(物語を書いた水曜日)
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