「………」

財前君は無言で輪道さんの紙を奪うようにして取ると、そのまま輪道さんを睨み付けている。って、いやいやいやいや。

「財前君。流石に礼儀は必要だよ?ほら…ありがとうは?」

「………」

「ねえ、財前君。まさか礼儀も出来ないほど君って馬鹿だったっけ?それとも頭の中にお花畑でも咲いている?それだったら近づかないでくれると嬉しいな。私は礼儀知らずが一番嫌いなんだ」

いや、礼儀知らずが一番嫌いなんて嘘だけど

「……輪道先輩、あり、がとうございまし、た」

「うん。よく出来ました。ふふ、ごめんなさい。輪道さん、財前君たら君に会うのが恥ずかしいらしいんだ、あんまり気にしないでやってほしいな」


財前君を見ると羞恥にまみれた顔をしていた。なんとまあ、いじめがいがある人なのかな。本当に屈辱って感じだ。
輪道さんを見ると、あれ、なぜだか怒っていた。まさか睨んでいたことが嫌だったのだろうか?
でもそれならば今怒る必要なんてないよ、ねぇ。

一体全体なにをどう彼女は考えているんだろうか


なんちゃって。

とりあえず、財前君を撫でてあげると嫌そうに顔をあげてくれた。


「あ、あのね。財前くん。私、もっと財前くんとおしゃべりしたいな」

輪道さんはまるで可愛い女の子のように財前君を誘惑(?)した。

「はあ?!あんた、なに言ってるんですか」

それにキレる財前君。
えええええええぇ。
みたいな感じで、クラスの前にいる白石君が表情をつくった。楽しい顔だった。というか彼は彼女に頼んだのになんできているんだろう。二度手間じゃないのかな、それって。

「だ、だめだよね……、ごめん」

「はい。分かってくれてよかったッスわ。俺、今先輩と喋ってるんッスから、ねえ、先輩」

話をこちらにふらないでほしいな、財前君。
君、さっきのこと根にもっているだろう。じめじめしい男だな。羞恥心ぐらい心の中におさめてほしいよ

とりあえず、否定しておこう

「喋ってないよ、財前君。どうしようもなく喋ってなかった。全然、全く、絶対に喋ってなかった。君と私は喋っていなかった。へんな嘘をつかないでくれないかな、嫌だなぁ」

「……先輩?!」

「そんなに恥ずかしがらなくていいよ、財前君。大丈夫、輪道さんは優しい人だから。というわけで、二人にするね。私行くところが出来たから。輪道さん、財前君のことよろしくね。掃除サボるだろうから、掃除場所までついていってあげてくれると嬉しいよ」

「せ、先輩!ちょ、ちょっとまち」

財前君の顔を見ると地獄に置き去りにされた人のようだった。顔が白いを通りこして黒いになってきそう。でも大丈夫だよ、財前君。明日には君、輪道さんについてペラペラと喋ることになるんだから


「じゃあ、財前君、輪道さん、ごきげんよう」


椅子を立って歩きだす少し前に輪道さんの顔をのぞくとまるで当たり前のように私を見て笑っていた。
ふーん、ただの馬鹿じゃあ、あんまりないってことなかもな。だなんて思って、私は進み出す。教室を出ると白石君に「おはよう」と挨拶だけして、渡り廊下を通って、理科室の隣にある風紀委員会の小さな部所に入った。







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