笑い笑う




「ん?」

私の家の近くには大きな公園がある、その公園は市立だか国立だからしく、整備は整っているのだけど、その整備の周りにはいい年した大人がぐるりと囲んでいて無情な気持ちにさせてくれる。段ボールハウスを作り、そこを家としているおじさん達。シワシワになったシャツをきた不潔な彼らを見るのはいつものことだけど、しかしながら二メートル近くの青年がいるのは日常ではない。目を細めて、改めてその非日常な青年を見てみると、その青年は四天王寺の制服を着崩しているのが分かった。
財前君かと思ったが、それにしては身長がでかい。巨人兵並の大きさに流石に財前君ではないと考えを改めた。
誰だろうか。おじさん達は一般の人からあまり好かれないから、あんな風に近寄られるのはなかなかない。一人でかつあげはないだろうし、何か用かな。
まあ、おじさん達もいい大人だから、心配はないと思うけれど。踵を返して家へと足を向ける。なんにしろ、厄介事は逃げるに限る。巻き込まれるのは勘弁だ。
しかし残念なことに厄介事には巻き込まれてしまった。私の名前が呼ばれる。振り向くと知り合いのおじさんがこちらに向けて手を振っていた。何回か名前を呼ばれ、しゃがれた声でこっちに来いと言われた。

「十万くれたら行ってあげてもいいよ」

お金のない彼等にとってこんな条件は達成出来ないことに違いがない。振り返らずに足を進める。構ってもらいたいのならば構って貰える財前君に構ってもらえばいい。出来ない私に声をかけてくるなんて、無駄の極みだ。大人といい子供いい学習しない人達ばかりで私は悲しいばかりだ。






「先輩、どうしたらいいんっすかね」

「さあ、告白してみたら?案外OKでも貰えるかもよ」

「他人事やと思ってますね」

「他人事だからね」


何時もと同じようにお昼を食べていると財前君が頬をぷっくりと膨らませてそう言った。ピアスをパンパンあけている男だとは思えないほど可愛い姿に笑いそうになるが、ものを食べている最中に笑うのはいただけないことだと思い、その笑みを食い殺した。


「この会話は何時ものように続けられているけれど、飽きないの?」

「いつか別の解答してくれるんやないかって期待してるんですわ」

「いらない期待をどうも、恩を仇で返す結果にしかならなさそうだけどね」

「諦めんといて下さい……」

私になにを求めていらっしゃるのやら、さっぱり理解できない。口に運んだフロマージュを口で弄びながら潰すように飲み込む。そうしたら財前君が私に一冊の本を差し出してきた。ファンシーな本だ。なんだこれ。


「少女、漫画です」

「………はい?」

「だから少女漫画。女子の気持ちを知るならまずこれやて、部長が」

「…………」

笑っていいところなのだろうか、これ。
いや、笑っていい場所の筈だ。笑おう。

「あははははは」

「!?」

「何故私に少女漫画を渡すのかというのはまだきかないでおいてあげるけど、それよりもその少女漫画ってまだ真新しいよね?」

もしかして財前君が買ってきたりしたのかな?

顔が真っ赤に染まった財前君を見てやっぱり笑いどころなのだとそう思った。




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