「で、どう意味ですか?」


四天王寺中の売店はとても万能で文具から食品まで幅広いジャンルを販売している。そんな四天王寺の売店食品の競争率は高く、それ故たまに運動系の部活動は試合前になると四時間目をサボって買いに並ぶ程である。とはいえこの目の前にいる財前君はそんなことをせずともフリーパス同然で売店食品を買える。所謂VIP待遇というやつだ。監督のオサムさんが関わっているこの種のネタはばらしてしまえば簡単で、某航空会社と同じようなシステム、つまり先にお金を振り込んでいて、というやつらしい。確か、ちゃんと説明するならば、まずオサムさんが年度事にテニス部限定で先にお金を前払いする。このときお金の莫大になるのはいうまでもないが、あの監督さんは案外あんななりをしていても良家の坊っちゃんらしいので、払えないことはないらしい。で、先払いしたお金からテニス部が使った分をひいていって、各自皆から月毎に食費を回収するというシステムらしい。余分にお金を払うと言うことで売店側も待遇を良くするし、それにこの学校のテニス部は全国区でも有数の実力だ。自然的にお昼休み練習をすることもないわけではなくて、効率を考えると妥当だろうなと思う。えげつないとも思うけれど。お金って大切なわけだ。因みに最初のお金があまりにあまった場合はさすがに売店でも困るらしく来年度のテニス部食品に当てられるらしい。やりくり上手なオサムさんであった。

そんな売店で買われた品物の一つである焼そばパンに食らいつきながら、財前君は私に話を促してくる。今日も今日とて昼練があるらしい彼は時間を気にしながら、それでも私との会話をする気があるのだろう。あまり咀嚼しないで飲み込んでいる。消化に悪いこと請け負いだ。


「財前君、主語が抜けているし、それに食べ物はちゃんと噛んで食べないと駄目だよ。百回噛んでとよく言われるでしょう?」

「そんな暇ないからこうやって食べるんと会話を両立させるんやないですか」

「それはそうだけれども、昼休みは五十分あってそのうち十五分間が基礎体力の為のランニングで、五分はミーティングなんでしょう?人間は二十分間の食事で満足感を得られるというし、十二分に食事は出来るんだから、落ち着いていこうよ」

「そうゆっくり時間をかけていたらランニングの時に胃にあるものが競り上がってくるんっすよ、食後十分は必要です。でも移動時間とか考えると早めに食べておかないと」

「……いつもながら、昼練がある日は慌ただしいね」


ジャムパンをちぎって口の中に入れつつ運動部に入らなくて正解だったなあと一人納得していると、焼そばパンを食べ終わった財前君が二個目のパンに手を伸ばした。焼そばパン、かなりボリュームがあったように思えたのだけれども。財前君の次取り出したパンをみながら冷や汗をかく。現れ出たのはカレーパン。香ばしいカレーの匂いにジャムパンとのミスマッチを覚えて吐き気をもよおした。甘ったるい匂いとカレーの刺激臭がここまで合わないとは。


「カロリーとか考えたことある?」

「カロリー?ああ、食べなきゃ体重が減ってしまうからその為に摂取目安としてあるあのお手軽な単位のことですか?」



……財前君は今、全国の乙女を敵に回した。
そう、思いたい。


「栄養学の単位だよ。その食物を消化するに当たって発生する熱量のことだね、一般的には」


財前君のような人間には違うようだけど。全く羨ましい限りだ。そういうのを考えなくてすむのだから。というか食べないとどんどん減っていく体重って……。そしてそれを誘発している運動って……。益々運動系の部活に入る気がなくなった。


「家庭科の授業のときに習わなかったの?」

「あー、そういえばそんなこともあったような」


「真面目に授業を受けていないのは財前君も同じみたいだね」


出席もしてない人に言われたないですわ、と最もなことを言う財前君。でも、ちゃんと聞いていない授業と出席しないことの差はあまりないと思うんだけどね。あれだろうか、出席することに意味があるとか?
ボランティアではないのだから、そういうきれいごとはやめて欲しいものだ。






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