6
まさか、三時間目の休み時間に抜け出して、四時間目の授業の始まって十五分ぐらいで、座布団の上でやるとされるトランプゲームを主に相手に不快な気持ちをさせるものと合併させられてやられるとは思わなかった。
やれやれと肘を机について頭を手の上にのせて、馬鹿にしていると思われても別段構わないように装ってみせる。
そういえば彼は笑いを取るのが上手いらしい、笑わせるためのこれもネタなのだろうか。でも、それっていつも笑っている私には効かないと思うんだけどねぇ。
などと思いながら彼に笑ってみせる。彼はやはり藁人形を見たように顔を暗くさせた。
「な、なんやの?」
「君こそダウトだなんていうカード遊びを私に向けて言っておきながら、動きで死ねってなんなんだい?」
「へっ?」
「なんだい?君、まさかダウトゲーム知らないのかい?」
カードゲーム、知らない人間なのかもしれないなぁ。
IQが高いといっても、全てを知っているなんてことには絶対にならないだろうし。
そう思うと天才だって万能じゃない訳だ。
まあ、二万も三万もあるカードゲームの種類だ、全部を知っている人間なんていない
「し、知っとるよ?ゼロサムゲームのやつでしょう?」
「あれ?凄い凄い、本当に知ってるんだねぇ。財前君ぐらいだと思ったよ、ダウトなんてマイナーで収集がつかないゲームを知っているのはね」
「………なんやのアンタ」
なんなのとはご挨拶ではあるがまったくその通りである。私がこの人(彼とも彼女ともいえないので代用)だったとしたら、やっぱりこんな厚顔無恥そうな、無礼な奴になんなんだい君とは投げ掛けていそうだ。まあ私が私と会うとなると、鏡や水面でもない限りないだろうし、そうしたとしたって私が私になんなんだい君って問い掛けたらとてつもなく可笑しな人だ。
そんな人になったら友達が一人としてできなくなってしまう(今でも十分いないが)
取り合えず首傾げて、両手をあげる。降参のポーズだ。
なんなのと言及されると嬉しくない、話を反らし、会話を戻すとしてみる
「ふふ、ごめんね。からかいたくなっただけだよ、他意はない。で?私の何にダウトなのかな?」
口元に手をおいて上がる頬を隠す。
ダウトだなんて言われたのは初めてだ。マゾっ気はとは真逆をいくエスっ気しかない私は、この後どんな風にいじめ返すかの算段を巡らせることにした。
「名前よ名前」
「ああ、輪道奏愛?ふふ、いい名前でしょう?気に入っているんだ、気に入り過ぎてフルネームでいつも言うぐらいね」
「アンタ、かなちゃんじゃないでしょう?」
かなちゃん
かなちゃんねえ
輪道奏愛
だからかなちゃん?
安直だねぇ
「かなちゃん?おや、それはそれは私と似ている名前の子がいるのかな。ふふ、かなちゃん、かなちゃん。へぇー」
「この学校に輪道奏愛は一人しかおらへんよ」
「あれ?そうなのかい?ふふふ、それはミステリーだね。私は輪道奏愛という名前だけど、君がいうにはもう一人輪道奏愛がいるんだよね。あれぇ、どっちが間違いなのかなぁ」
「アンタが嘘ついてんでしょう」
人差し指でビシリと射抜くように指される。
犯人はお前だ
みたいな感じかな?
あってるから、ぐうの音は出ないなぁ。
言い訳なら出るけどさ
「おやおや、まさか会ってそうそう疑われるだなんて。酷いねぇ」
「酷いなんて言えるタチじゃないやろ、アンタ」
「おや?会ったばかりの君に私の何が分かるっているんだろうね、とても聞きたいよ、金色さん」
「……それは」
- 13 -
[*前] | [次#]