「財前君」

「なんッスか」

「君、ちょろいんだね」

「いきなりなんですか」

だって、ねえ。


「私でも財前君は落とせそう」

「それはないッスわ」

「それは酷いね」

「…………」

恥ずかしいのだろうか、財前はいきなりむっすりしてしまった。

確かに、恋沙汰は恥ずかしいだろうな
昔馴染みというやつに私は当たるだろうし


「でも、君1日で心変わりした剽軽ものだよ?」

「うっ……そ、それはそうですね」

「でしょう?財前君たら尻軽だね」

「先輩先輩、それ、使い方違いますよ」

「似たような意味だろ?」

「俺は売女だと?!」

「え……あ、うーん、うん」

「なんで曖昧に返すんすか」

「いや、天才財前君から売女なんて下卑た言葉聞けるとは思えなくてさ」

「俺も聞きたいんッスけど、先輩よく尻軽って言葉知ってたんッスね」

「あはははは、口が減らない子だな」

「ふふふふ、先輩も口減らん奴ですね、尊敬しますわー」



彼の腕を握ってギリギリと絞めてやると、少し痛そうにしてこちらを見る。
仕返しをやってこないところを見ると本格的には痛くないのだろう



「私が尊敬出来る出来ないという事はどうでもいいよ。今は君の恋沙汰のお話だ」


財前は苦い顔して黙りこむ。
私に弱点をさらけ出したのがそんなに屈辱だったのだろうか
悪用しそうに見えるのだろうか



「大丈夫だよ、最大限に君のことを応援してあげるからさ」

「……嫌な予感しかしませんわ」

「財前君たら本当に正直なお口を持っていらっしゃるね」

「お褒め頂き光栄ですわ」

「後ろから刺していい?」

「なんで?!」

「いや、ノリで」

「ノリでっスか」

「うん」

「怖いッスわ」

「ごめんね」



持っていた手を離すと財前君は持っていた手を擦る



「で、私は君を囃し立てたらいいのかい?」

「実は協力する気ありませんよねっ!」

「大丈夫、のろけ話しならば聞いてあげるから」

「実はとか生ぬるい表現で表せんほど協力する気ありませんよねっ!」

「あはははは」

「笑って誤魔化そうとすんなや」

「先輩には敬語だよ、財前君、素敵なお口にはそんな簡単なことさえ出来ないのかい」

「なんや、めちゃくちゃムカつきますわ」

「本当のことだからじゃないかな?」

「ちゃいますわ!」


財前君は叫ぶ。
嫌だなぁ、いきなり叫び始めるだなんて恥だよ。財前君



そのあと、ちゃんとした話をした記憶がない

何だか財前君にカミングアウトされただけで終わってしまったように思える


その日は財前君と歩いて家に帰り、夜遅くに眠りについた






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