元TDDが実は仲良しのままだった話.
※元TDDが仲良しでそれを暴露するタイトルそのままの話。続きません。キャラ捏造崩壊ありますのでご注意。なんでもありの方のみどうぞ。夢じゃないです。
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中央区での決勝戦から数週間が経った頃、碧棺左馬刻から食事会の招待状が届いた。
「ということで、これに俺達3人も参加しようと思う」
夕飯が終わり、片付けをしてから大事な話があると、改めて弟2人を席に着かせた。そこに既に封を切った高級そうな、だがシンプルな封筒を差し出す。それを読んだ2人はわなわなと肩を震わせ、信じられないという表情で俺を見た。
「にいちゃん、本気か!?」 「そうですよ!これ、ヨコハマディビジョンの碧棺左馬刻からの招待状でしょう!?果たし状のようなものじゃないですか!」
案の定、弟達からは非難の声が飛ぶ。それもそうだ。俺と左馬刻は犬猿の仲。本来ならこんな物が届くはずもなく、届いたとしても破り捨てるだろう。だがそれも決勝が終わり決着が着いた今は状況が変わったのだ。
「事情があるんだ。それに他のチームも来る」 「『Fling Posse』と、『麻天狼』…」 「それってつまり、元『TheDirtyDawg』が集まるってことですよね」 「そうだな」
かつて存在し、俺が在籍していた伝説と呼ばれるチーム。今は各々のチームでリーダーをしている。実力は前回のバトルでわかった通りだ。
「俺達4チームが集まるのは目立つ。だから左馬刻の用意したホテルで行われるんだろ」 「でもそれは行く理由になりません!もしバトルをするためなら、怪我だってするかもしれないのに…」 「バカ、三郎!にいちゃんが左馬刻に負けるわけねぇだろ!?」 「お前こそ低脳か、二郎!?負けるなんて言ってないだろ!ただでさえ左馬刻は強敵で暴力的なんだ。いくら完璧ないちにいだってもしかしたら怪我するかもしれないだろ!?」 「待て待てお前ら」
脱線しだした弟達を制し、どう説得するか頭を抱える。俺の身を案じてくれているのは嬉しい。最高に可愛い弟達だ。勿論俺だって怪我はしたくないし2人にも負わせたくない。だが今回はそんなことは起きない。この郵便というアナログで届いた所も、カモフラージュだということも。だがそれを今説明するわけにはいかないのだ。
「大丈夫だ、2人とも。今回はバトルしにいくんじゃねぇ。食事会だって書いてあんだろ。寂雷さんも乱数もいる」 「そうだけど…」 「何より俺が着いてる。俺がお前達をわざわざ危険な目に遭わせると思うか?」 「にいちゃん…!」 「いちにい…!」
よしよし。なんとか納得してくれた2人に内心ホッとため息を吐き、もう遅いからと寝るよう促した。手紙を封筒に仕舞い、スマホを取り出す。あるグループメールに『説得完了!』とだけ送る。すると間髪入れずに3つ了解のスタンプが付いた。
「早っ」
それを見て嬉しさと可笑しさにふっと口元が緩んだ。
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あっという間に2週間は過ぎ、指定されたホテルに着いた。泊まるための荷物をフロントに預け、案内されるがままに大きなホールの入口まで来た。このホテルはどうやら左馬刻の管轄内らしく、警備も管理もしっかりされているらしい。情報が漏れることはないだろう(わざわざ裏口指定だったし)。
弟達から緊張が伝わる。分かっていたこととはいえ、実は俺も少し緊張していた。ふう、と呼吸を整え扉に手を掛ける。中は天井の高い、豪華なホールだった。
「うわ…」 「すご…」
後ろからの声に同意する。4チームだけの会合だというのに料理が様々に置かれ、飲み物もサーバーに並々と入っている。金掛けすぎだろ。
「おや、来たね」 「寂雷さん。お久しぶりです」
声を掛けてきたのは、先に休んでいなシンジュクディビジョン、麻天狼の神宮寺寂雷さんだ。立派な長いソファーが良く似合う。
「早いっすね」 「そうかな。2人がしっかりしているからかもしれないね」 「えっ」 「んええ〜、まじっすかあ??センセー褒め上手っ!」
急に話を振られてビクついた観音坂独歩さんと、身を乗り出し騒ぎ出した伊弉冉一二三さん。2人は弟達と仲良くしていることを知っている。
「他のチームはまだっすかね」 「そうだね。でももうすぐ時間だし、来ると思うんだけど…」
腕時計で時間を確認していると、タイミング良くホールの扉が開いた。入ってきたのはFling Posseの面々だ。
「あーーっ!一郎!久しぶり〜〜〜!!」 「おう乱数」
駆けてきた乱数だったが、数歩手前でピタリと止まる。
「あれあれ〜〜〜??な〜〜〜んか臭いと思ったらオッサンじゃ〜〜〜ん。相変わらず消毒と加齢臭混ざっちゃって見苦しいなぁ???」 「ふう、相変わらずですね。飴村くん。歳上に対する礼儀がなってない。何度言わせるんですか」 「あ!怒った?怒っちゃった??やだやだ、これだから老害は早く滅びて欲しいよね〜〜〜」 「君のその若作りもいつまで持ちますかね」 「ちょっと2人とも、やめましょうよ」
いつもの如く不穏な雰囲気になった2人の仲介に入る。Fling Posseの他の2人は立食コーナーに行っており、こちらを気にしていないようだった(いや気にしてくれ)。
「おう、揃ったな」
キイ、と音を立て扉が開き、良く通る低音がホールに響いた。それと反して中にあった音は静まり返る。この食事会の主賓の登場だ。
「遠くまで悪ぃな、寂雷さん」 「いいや、呼んでくれてありがとう、左馬刻くん」 「ねえ、ボクにはー??ボクには労りの言葉とかないのー?」 「あ?お前には必要ねぇだろうが」 「ひっどーい!!」
「おい」
輪から少し離れたところで見ていた俺は、なるべく低音で啖呵をきった。ピシリと空気が凍る音が聞こえたかのようだ。早足に左馬刻の前まで行きガンを飛ばす。後ろで慌てたような弟達の声が聞こえた気がした。
「おーおー、まさか本当にノコノコ来るとはなあ?一郎くんよぉ?」 「……売られた喧嘩は買う主義だからな」 「はっ!そりゃいい。腹減らすために運動でもするかあ!?」
ガっと襟元を掴まれる。それに対し反射的に掴みかえす。
「………………」 「………………」
無言のガン飛ばし合い。それを終わらせたのは、2人同時だった。
「…………ぶっ、ぶはははははは」 「…………ぐっ、ふはははははは」
今まで我慢していたものが切れたかのようだった。リーダー達以外の周りが困惑しているのを感じながらも、ツボに入ってしまいひーひーと呼吸を整える。
「もお〜!2人とも迫真過ぎない!?」 「本当に殴るのかと思ってハラハラしてしまったよ」 「ふっ、ふふふ、すんません。なんかノっちゃって」 「いやあ、このやり取りも何だかんだ面白かったんだよなあ」
先程の空気とは一変して楽しげにする元TDDに、周りはひたすら困惑した。
「おう、すまねぇなあ。つまりはこういうことだ」
それを察した左馬刻が、否左馬刻さんが俺の肩を勢いよく組んだ。力強っ。
「い、いちにい…!?」 「えっ!?どういうことなの兄ちゃん!?」 「あー…、今まで騙しててごめんな。実は左馬刻さんとは犬猿の仲でもなんでもないんだ」 「そーそー。全部演技だったわけだな」 「さ、左馬刻!?」
真っ白になっている弟達と、信じられないという顔で眼鏡をガタガタとさせている入間銃兎さんに罪悪感が増すが、それよりもやっと言えた開放感の方が勝った。
「ごめんね〜、ボクたちも仲良しなんだよ」 「ええ。私達も演技でしたからね」 「ええー!!マジかよ!全然わかんなかったぜ!」 「……わっちよりも嘘がお上手でやんすね☆」
純粋に驚く有栖川帝統さんとは反対に、夢野幻太郎さんは口では飄々としているのに明らかに動揺していた。まあそりゃ、あんなに罵詈雑言が嘘だなんて驚くよな。
「色々酷いこと言ってごめんね〜」 「私こそだよ。演技とはいえ酷いことを言って悪かったね」 「お詫びに久しぶりにヘアカットしてあげよっか!」 「おや、それは嬉しいね。お願いしようかな」
向こうは向こうで和み始めたようだ。こうして、元『TDD』実は仲良しなんだよ暴露パーティが開幕したのである。
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(そもそも仲悪くするように言ってきたのは中央区の指示だもんねえ) (そうそう。いきなりそんなこと言われてもなあ。左馬刻さんをディスるの大変だったぜ。こんなかっこいい人貶せるのかってな) (その割にはノリノリだったじゃねえか) (途中から楽しくなりました) (こいつ……) (あははっ!やっぱり一郎サイコーだね!) (このメンバーで集まるのは時間が開いても変わりなく楽しいね。今のチームとはまた違う良さがあるよ) (これからは遠慮なく仲良くしよーねっ) (そうだな)
(兄ちゃんすごく楽しそう…) (いち兄…) (山田一郎くんの名前を出した時の喧騒は何だったんだ。あれも嘘か?) (うん。左馬刻が楽しそうなのは小官も嬉しい) (乱数って演技派だよなー。全然わからん) (演技っていうかもうその次元超えてません?) (先生が見せたあの怖い顔って演技だったのか…?本気で怖かったんだが) (まあまあ!仲良しならそれでよくね?じゃあ俺らも仲良くしよーっ!)
201115
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