08
連れて来られたのは学校だった。何で戻ってきたんだろう。そう喜三太に聞こうとしたら急に目の前が真っ暗になった。


「うえ!?え!?」
「アイマスクだから大丈夫だよー。ちょっと我慢しててね」


その途端身体が宙に浮いた。まだ取らないでね、という喜三太の声が耳元で聞こえたからどうやら抱き上げ、いやいやこれはお姫様抱っこ!?わたし重いのに!細いのにどこにそんな力があるのか、そのまま歩いている感覚がある。どうすることもできずに混乱していると、バタンというドアの閉まる音と同時に身体が揺れた。この乗り心地は車のようだ。


「お願いしまーす」
「畏まりました」
「き、喜三太…?」
「すぐ着くからもうちょっと待ってね」


手を握ってくれて、すっごく驚いたけどその手はとても優しかった。




****************



車が止まり、手を引かれて下ろされたのはいいものの、まだアイマスクは取ってはいけないらしくそのままどこかを歩く。隣にいるのは喜三太だから心配はないけど、前が見えないのは少し不安。おどおどとしながら着いていくと、喜三太がわたしを止めた。取っていいよ、と言われたので少し緊張しながら取ると、


『おかえり、唯ー!!!!』
「……………え?」


パンパンッ、という弾けるようなクラッカーの音と、そこにいた10人の顔に驚きを隠せなかった。状況が理解できずに固まっていると、庄ちゃんが前に出てきた。


「びっくりした?」
「そ、りゃもう…。何が何だか…」
「じゃあ成功だ」
「え?」
「唯、せっかく二年ぶりの再会なのに何もしないなんて勿体ないだろ?だから、今日は唯のお帰り会!」
「お帰り会…?」
「ちなみに命名は団蔵」


らしいでしょ、と笑う庄ちゃんは大人っぽくてどきりとしたけど、昔と変わらない笑い方でほっとした。何より、何も連絡を入れなかったのに即席でもみんな集まってくれたことが嬉しかった。


「しんべヱに頼んで部屋を借りたんだけど、料理は無理だったからコンビニのなんだー。ごめんねー」
「喜三太…っ。ううん、十分だよ!」


みんなは既にテーブルを囲んでお菓子を摘んでいる。会と言っても前と変わらない光景に鼻がつんとした。


「ケーキは唯の好きな…、って唯?」
「あ、唯泣いてるー!」
「う、うるさい!泣いてない!」


虎若が叫ぶものだからみんなこっちを振り向いてしまった。恥ずかしくて下を向くけど、バレバレのようで周りからくすくすという笑い声が聞こえた。穴があったら入りたい。


「あ、そうだ」
「ん?」


ただいま!


100404
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前回書いてからだいぶ時間が経過し、この設定で続きを書くのが難しくなってしまいました。なので無理矢理ですがここで連載終了としたいと思います。ご迷惑をおかけしました。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
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