06
飛び出したのはいいものの、どこに行ったらいいかわからない。今日転入してきたばかりだし、中等部と高等部の造りは若干違うのだ。まだ学園内を把握しているわけではない。でも何となくはわかった。とりあえず屋上行ってみよう。




***************


重い扉を開くと、少し肌寒い風が肌を撫でた。見渡してみたが見当たらない。期待してなかったわけではないけどショックだったりする。ため息をついて、戻ろうとした時、上に続く梯子が視界に入った。可能性可能性。自分に言い聞かせながら登り上を見ると、いた。


「………」
「………」


見つけたはいいけどどうやって謝ったらいいのか考えていなかった。少し離れた所に座って考える。三治郎は寝転びながら空をじっと見ている。わたしも寝転んで同じように見上げてみる。今日は綺麗に澄み渡って白い雲が浮かんでいる。心の中はもやもやしてるのに、少し清々しい。久しぶりにこんなに澄んだ空を見た気がする。


「あ、飛行機雲」


ゆっくりと、真っすぐ白い線が引かれていく。そういえば昔よくこうやって屋上で空を扇いだ。ぽつりと呟いた声に気づいたらしい三治郎が何かに気づいたように声を出した。


「風船」
「ホントだ」


ふわふわと風に吹かれながらどんどん上がっていき、遂には空に吸い込まれていった。そういえば引っ越す時に皆に風船を渡されて、それを空に投げたっけ。どうして忘れてたんだろう。


「三ちゃん、ごめんね」
「……」
「連絡入れなくて」
「……」
「何かあったら一番に三ちゃんに言うから」


それが約束。小さい頃から、三ちゃんと二人で交わしたもの。忘れててごめん。もう破らないから。


「……遅いよ」
「うん」
「次破ったら本気で突き落とすからね」
「えー!」


とか言って冗談ぽく言うから大丈夫。三治郎は照れ臭そうにそっぽを向いてしまった。わたしはそれをみてつい笑ってしまった。


「……何笑ってるの」
「ふふっ、んーん。何でもない!」
「……そう」
「教室帰ろうか」


起き上がってみたけれど、それはいつの間にか隣にいた三治郎に手を掴まれたことによって阻まれた。くいくいと引っ張るから座れという意味らしい。大人しく従うと、また三治郎は横になった。


「サボろう」
「え、いいの?」
「どうせもう授業始まってるし、今更戻るの嫌だもん」
「(わたし初日なんだけどな…)」


それでも付き合ってしまうんだからどっちもどっち。


風船


(お帰り唯)
(ただいま兵ちゃん)
(で、仲直りできた?)
(うん!)
(それはよかった。あと先生が職員室来いってさ)
(うあ!やべえ!)
(三ちゃんもね)
(えー)


(お前ら…)
((すみませんでしたー))

100309
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