05
「…………」
「…………」


とりあえずこの痛い沈黙どうにかなんないかな。確か前の話もこんなかんじに始まった気がするけど気にしないことにする。わたしの前には懐かしの幼なじみ。その隣には彼と仲良しの兵太夫。そしてわたしはその前で床に正座をしている。ちなみに彼らは椅子に座っているわけだから見事に見下ろされている状態だ。尤も、この痛い沈黙を作り出している原因の物凄く恐ろしいオーラは幼なじみから放出されていて、兵太夫は傍観に徹している(ニヤけているように見えるのは気のせいじゃない)。


「……ねえ唯」
「は、はいっ!」


不意にあいつが口を開いた。つーか教室にいるみんな黙んなくてもいいじゃんむしろ楽しそうに話しててよ。なんでこんなに教室の居心地悪いの。


「僕さ、言ったよね」
「な、何を…?」
「しらばっくれる気?」
「いいえ滅相もない!!!!」


素敵笑顔のまま近づけないで!半端ないくらい恐いんだから!誰かがごくりと生唾を飲む音が聞こえた。誰かこのポジション変わってくれないかな。団蔵辺りいいと思う。こいつ昔はもっと可愛かったのに、この二年間でいらないスキルを取得したようだ。


「で?」
「で?」
「お前、何で僕がこんなになってるか、わかってるの?」
「…………わか」
「わからないなんて言ったら窓から突き落とすからね」


ええええ!?わたしに選択肢なくない?あとここ三階だから頭から行ったら確実にあの世逝くよね!必死に頭をフル回転させて思い出そうとするけど全く記憶がない。だからもう思い切って聞いてみた。


「あのさ、本当に思い出せないんだけど…」
「………本当に忘れたの?」


すると、彼は一瞬悲しそうな表情になって顔を伏せた。が、それも一瞬。


「兵太夫、手伝ってくれないかな。早くこいつ落とさなきゃ」
「ええええ本気!?嘘だよね!まさか転校初日に殺人事件起きるなんて思わなかったよ!?」
「最後の言葉はもう十分でしょ?」
「ひいいい」
「はあ…。三治郎、もういいんじゃない?」


キレてるのは仕方ないけどさ、と言ってくれたのは兵太夫。でも幼なじみ、三治郎はずっとイライラしているようで、じろりと兵太夫を睨んでから教室を出て行った。あと数分で授業始まるのに。


「へ、兵ちゃん…」
「はあ…。本当に覚えてないの?約束」
「約束…?」


は、とした。普通なら何ともないけど、わたし達の仲では大変なことをしてしまったのではないか。兵太夫を見ると、早く行けと言われたから、わたしは痺れる脚を叱咤して走り出した。


正座


‐‐‐‐‐‐‐‐‐
幼なじみは三治郎でした。

100303→100304誤字修正
prev next top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -