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「よし、一先ず完了っ」


段ボールを片付けて、肩を鳴らす。新しい部屋にはまだ慣れないけど、自分に合ったいい部屋だ。今まではアパートやマンション暮らしで狭かったけど、今回は念願の一軒家。二階に自分の部屋があると思うと、新鮮だ。新しい家、新しい部屋、新しい環境。でも一つだけ違うのは、ここが懐かしいということだ。生まれた時からここに住んでいたわたしは、高校はこの地区の学校にしたかった。だから帰ってきたのだけど、お父さんの仕事の都合上中途半端な時期になってしまった。


「唯ー!部屋の片付け終わったらお隣りさんに挨拶に行ってきてー」
「え、お母さん達は?」
「実は昨日の内に行っちゃったのよー。だから一人で行ってきてー」


娘置いて先に行ったのか。いつの間に。めんどくさいけど、さすがに礼儀だからなあ。お隣りって言っても片方は空き家だから一軒でいいはず。渡された手土産を持って家を出る。


「行ってきまーす」


と言ってもすぐなんだけど。少し緊張しながらベルを鳴らす。はーい、と少し間抜けな声の男の人が出た。


「あ、あの。先日隣に越してきた夏目という者ですが」
『はーい、少し待っててくださいねー』


言うが早いか、中から同年代くらいの男の子が出てきた。前髪を結ってピンで止めていて、どこと無くかわいらしい人だ。


「はじめまして、夏目唯と申します」
「はじめましてー。山村喜三太です。よろしくねー」
「よろしくお願いします。これ、少ないですがどうぞ」
「わ、ありがとうございます!」


手土産を渡すと、彼はふにゃりと笑った。あ、やっぱりかわいい。ふにゃふにゃしてる。わたしが密に癒されていると、家の中から喜三太ー!と彼を呼ぶ声がした。


「金吾だ。挨拶しておいた方がいいよね!ちょっと待ってて!」
「え、あっ」


山村くんはわたしの返事を待たずに中に入って行った。さっきの声、聞くかぎり男の人っぽいけど兄弟かな?しばらくして、山村くんともう一人男の人が出てきた。


「は、はじめまして。皆本金吾です。よろしくお願いします」
「あ、はい、はじめまして。夏目唯です。…あれ、皆本?」


何で名字違うんだろう、と二人を見ると、ああ、という顔をされた。似てないしな。


「僕たち、二人で住んでるんだ。親がこっちの学校に通わせるためにね」
「二人とも両親は仕事があるから離れて生活してるんだけどね」
「へえ、そうだったんですか」


わざわざ説明してもらった。なんかいろいろ大変そうだな。同い年っぽいのに。


「ところでお二人は幾つ何ですか?」
「僕たちは16、高一だよ」
「あ、そうなんですか!?わたしも高一です!」
「わあ、同い年!じゃあ敬語は止めていいよ。僕のことは喜三太でいいし!」
「じゃあ遠慮なく。わたしも唯でいいよ」


わいわいと二人で盛り上がっていると、突然皆本くんがあ、と声を漏らした。


「夏目さん、おばさんが呼んでるよ」「あ、ほんとだ」


皆本くんが指した方を見ると、お母さんがこっちに向かって手招きしている。どうせ面倒なことなんだろうけど、無視すると煩くなるので帰ることにした。


「じゃあわたし帰るね」
「おう。いつでも来いよ」
「ばいばい唯ちゃん!」


二人に手を振ってわたしは家に帰った。お母さんはやっぱりあの子かわいかったでしょ、とかあの子達いい子よね、という内容だったからスルーして自分の部屋に戻った。早速友達ができてよかった。


新生活

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始まりました、一は現パロ。高校一年生になります。ちなみに上級生は出す予定ですがそんなにでしゃばりません。歳は六年生が21歳でみんな大学生です。

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