ひなたぼっこ | ナノ


▽ 裸の付き合い

土井先生に学園内を案内してもらっている最中もあまり生徒には会わなかった。特に上級生。下級生には自己紹介を軽くしてちょっと仲良くなったけど、四年生以上には会わなかった。土井先生に聞くと、四五六年生合同実習を行っている最中らしく、帰ってくるのは明日になるそうだ。


「(安心したような、残念だったような…)」


物凄く複雑だったけど、明日には会うのだからうじうじしてられない。お湯に浸かりながらぼうっとしていると、脱衣所から物音が聞こえてきた。あれ、ヤバくないか。もう深夜だからくのたまも入り終わったと思ってたのに。もしくのたま上級生とかだったら…。


「…誰かいるの?」


あああああ小梅ちゃんじゃないかこれええ!!くのたま六年生の!あわあわとしていると、スパンと戸が開けられた(男らしいな)。その途端ばちりと目が合う。


「え、ええと…」
「……もしかして、新しい事務員の人?」
「!そ、そうだよ!」


何で知ってるの、と言う前に彼女は先生が言っていたから、と説明してくれた。当たり前だけど事前に生徒には事務員が来ると言ってくれているらしい。そのおかげか前のような鋭い警戒はされなかった。身体を洗いはじめた小梅ちゃんを見ていたけど、空気的に堪えられないので上がろうとしたが、ふと視界に入った小梅ちゃんの左腕。そこには包帯が巻かれていた。痛むのか庇いながら洗っている。でも片手では洗いにくいのか、背中まで手が届いていない。女の子だし、洗い残しは嫌だろうと声をかけた。


「背中、洗おうか?」
「、!…結構です」
「頼りたくないだろうけど、ちゃんと洗った方がいいでしょ。そしたら出ていくから」
「……」


背中が洗えなかったのがもどかしかったのか、彼女は案外あっさりと頷いた。布を受け取りなるべく背中と右腕を優しく洗った。洗い終わるとお湯で流し、わたしは宣言通り上がろうと布を渡してから腰を上げた。が、彼女は遠慮がちにわたしの腕を掴んできた。


「どうしたの?」
「……あの、」


頭も洗ってもらえませんか、とこれまた遠慮がちに消えそうな声で呟かれた。かっわいいなあ!!でもくのたまってプライド高いって聞いたし、何より初対面の得体の知れない人間に頭洗わせていいのかな。わたしの躊躇が伝わったのか、彼女は俯きながら呟いた。


「……貴女は初めて会った気がしないんです。だから大丈夫かなって思ったんですけど…、って何言ってんだろ」


何なんだ。わたしは一度消えた筈じゃなかったの?消えたからわたしのことなんて覚えている筈はないのに。彼女の可愛さに負けてさらさらの黒髪を丁寧に洗っていると、彼女が独り言みたいに本音を零しはじめた。


「……この間、実技実習でへましちゃって…。大事じゃなかったし動かせない訳じゃないけど、やっぱり痛くて。後輩達には心配かけたくないから言わなかったし、見せたくなかったから皆が入った後に湯浴みしてたんだけど、片手じゃ無理があって…」


彼女は随分無理をしていたらしい。後輩達に悟られない様に振る舞いながらも痛みに堪えていたのだ。プライドとかじゃなくて、もう意地だったのかもしれない。お湯をかけてあげて頭を撫でた。嫌がるかと思ったけど振り払わずに大人しくしていた彼女を見てつい頬が緩んだ。一緒に浸かりながら彼女は不意に口を開いた。


「……私、小梅って言います」
「小梅ちゃんね。えりかだよ」
「えりかさん、やっぱり前に会ったことありませんか?」
「、ないよ。わたし今日初めて学園に来たし。もしかしたら町で会ってたかもね?」
「そう、ですか…?」
「そうそう!」


未だに唸る彼女を見ながら一人冷や冷やしていた。うむ、よくわからないや。




裸の付き合い


(ところでえりかさんって男同士の絡みってどう思われます?)
(え、何で?)
(いえ、オーラ的に理解してくれそうだと思いまして)
(わたしって一体!?電波的な!?)


101024

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