ひなたぼっこ | ナノ


▽ ラスト

あ、れ?

みんなが見えなくなってくる。みんな楽しそうに笑い合ってるのに、わたしは遠い所から見てるだけ。誰もわたしに気づかない。あ、そうか。わたしが部外者だからだ。手を見ると、薄くなっていた。手だけじない。足も、身体も、たぶん全身。

わたしがこの世界から消える。

いつか来るとわかっていたことなのに、寂しかった。みんなに忘れられることか悲しかった。手を伸ばした。



*********



木造の天井。それを理解するまで時間がかかった。嫌な汗をかいている。夢、だった。でもやけにリアルで、もしかしたら今日これが現実になるのかもしれない。制服が消えてから三日、何も起きなかったから可能性はある。わたしは腹を括って息を吐いた。



*********



「えりかさん!」
「ん?兵助くん、おはよう」
「おはよう。えりかさん、今日の夜時間あるか?」
「今日の夜?」


珍しく一人で食堂に来た兵助くんは、カウンターに身を乗り出し問うてきた。今夜、ね。たぶんわたしは消えてしまうのだろうけど、それまでだったら。


「うん、大丈夫だよ」
「そうか、よかった!今夜、満月らしいんだ。だから季節外れだけど月見をしようと思って」
「お月見!いいねー。じゃあ簡易だけどお団子作ろうか?」
「ああ!みんなそれぞれ持ち寄る予定なんだ」


まだ早い時間ということもあり、食堂はそんなに混んでいるわけでもないので兵助くんと盛り上がっていると、後ろから三郎達五年生が入ってきた。


「兵助ーお前行くの早すぎだぞ」
「あ、ごめん」
「そんなに早くえりかさんに言いたかったのかー?お前昨日からそわそわしてたもんな」
「な…っ」


三郎がにやにやしながら兵助くんに突っ掛かると、彼は真っ赤になった。かわいいなあ。慌てて弁解してるけど、わたしもそんなに鈍い訳じゃないからわかる。お姉さん嬉しいよ。


「ありがとう兵助くん。みんなもね。早く終わらせて行くから」
「すみません、急に」
「いいんだよ雷蔵くん。わたしも楽しみだしね」
「よかった!じゃあ五年長屋で待ってますね!」
「了解ー」


いつの間にか騒がしくなってきた食堂に気づき、慌てて注文を貰った。こんな日が続けばいいのに、と誰に知られるでもなくため息をついた。うん、今日は楽しもう。



ラストディ



100925

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テーマ「人外ファンタジー」
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