ひなたぼっこ | ナノ


▽ 熱い

「「「いってきまーす」」」
「いってらっしゃーい」


元気よくお使いに向かう二年生を見送った。今日は小松田くんが外出しているので、わたしが門の管理をしている。洗濯物はくのたま達が申し出てくれたので有り難く頼んだ。門を閉めてふう、と一息つくと、不意に昨日を思い出す。だめだめ、今は暗くなってる場合じゃない。箒で辺りを掃いていると、とんとんと門が叩かれた。誰だろう、と箒を置いて開けると、わあ美形!


「おや、今日は小松田くんじゃないんですね」
「は、はい。今外出してて。どうぞ」
「失礼します」


うわわわ利吉さんだよ生利吉さんテンションギューン!って上がったよ。入門票を書いてもらってから、少し前の事件を思い出した。わたしがドクタケに(間違って)誘拐された時に協力してくれたらしい。わたしが起きた時はもういなかった。


「あの、わたし渡邉えりかと言います。この間はいろいろとありがとうございました」
「あ、山田利吉です。善法寺くんですか?」
「はい。伊作くんから聞きました。お礼も何もなくてすみません…」
「いえいえ!こちらこそ」
「おや、利吉じゃないか」
「父上!」


利吉さんに内心にやにやしながら話しをしていたら、山田先生が現れた。タイミングいいなあ。


「どうした利吉」
「母上から文を預かってきました。いい加減母上に顔を見せてやってくださいよ父上…」
「ん?ううん…」
「それと、着替えは絶対に持ってくるなときつく言われて来ましたので」
「ああ、それなら心配いらん。えりかくんが洗ってくれてるからな」
「は?」


利吉さんはぽかんと口を開けた。え、何何か変なことだったのかな。ていうかまじ美形です。


「父上、この子に全部洗わせてるんですか!?あの量を!?そしてあれを!?」
「お、落ち着け利吉…」
「これが落ち着いていられますか!!」
「あ、あの」


美形なのに凄い形相で山田先生に食いつく利吉さんに若干引きながらも、なんとか声をかけた。


「山田先生のだけじゃないし、皆のと一緒に洗ってるので大丈夫ですよ。慣れてきましたし」
「学園全員分の洗濯をやっているんですか!?」
「え?は、はい」
「父上!どういうことですか!事務の仕事ではないでしょう!」
「わ、わたしがやりたいと言ってやらせてもらってるんです!だから大丈夫です!」
「しかし…」
「大丈夫です!これくらいしないとわたしの気が済みませんし!」
「……わかりました。無理はしないでくださいね。まだ若いんですから」
「…ありがとうございます」


利吉さんが心配してくれたみたいな気がして嬉しかった。眉を下げて笑う彼が格好よくて思わず照れる(美形は何してもかっこいいんだよ)。


「………お前ら、後半から夫婦のようだったぞ」
「ち、父上!何を言いますか!」
「そうですよ山田先生!」
「はっはっは!そうだ、歳も近いことだしえりかくん、嫁に来る気はないかい?」
「父上!!」
「はっはっは」


いやいやいやいや。こんなかっこよくて優しくて仕事もできる人の嫁になるなんてめっちゃ理想っていうか願ってもないことだけど、駄目だろいやいやいやいや。


「山田先生、利吉さんにはわたしよりもっとお似合いな方がいらっしゃいますよ。まずわたしの場合顔から失礼ですし」
「いや?君は料理はできるし面倒見はいいし家事はできるしで、これ以上ないいい妻になると思うが?」
「やめてくださいよ先生…。利吉さんも迷惑でしょう?」
「え?いや…」
「は?」
「ん?利吉…お前…」
「……………一目惚れです」


んんん?はあああああ!?何言ってんのこの人意味わかんない。何一目惚れって。いつそんな素振り見せた。わたしに?山田先生に?嘘どっちもありえないし混乱半端ねえ。


「はっはっは!お互い結婚にはいい歳だしな!どうだいえりかくん、考えてみては?私は孫が見たいな」
「え、えええ!?」
「えりかさんどうですか、今度お茶でも…」
「え、あの…」


ちょっと待ってこういうの初めてだからどうすればいいかわかんないんだけど!彼氏いない=年齢だよ!しかも山田先生はいつの間にかいなくなってるし、こんな所で忍者発揮しなくてもいいんだけど!


「はは、そんなに気にしないでください。結婚とか気が早すぎるんですよ」
「あ、はは、ですよねー」
「でもいずれは返事を貰いますからね」


覚悟していてください、と言い出門票に名前を書いてから颯爽と去って行った。爆弾投下していきやがった、あの人。



熱い
(恥ずかしい)

100920

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -