▽ 察する
わたしは考えた。鞄とローファーが消えた。自分が消えかけた。たぶん、これはカウントダウンなんじゃないか、と思う。わたしがここにいられる時間を表しているんじゃないか。わたしの所持品は残り制服のみ。時間は限られている。それに、一つわからないことは消えるということは「現代に戻る」ことなのか、「死ぬ」ことなのかだ。消えた所持品達の行方はわからない。どうなるのだろうか。
「……ゃん、えりかちゃん!」
「ん?はいっ!?」
「注文取って頂戴!」
「は、はいすみません!」
そうだ、今昼食だった。慌ててカウンターに立ち注文をとる。わたしがいつ消えるのかはわからない。でもせめて、今はやるべきことはやっておきたい。いや、やらなければと思った。
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早い展開だな、と内心舌打ちしたかった。制服の姿が目の前で消えたのだ。夜中に消えるのか。もしかして日付が変わると同時にとか?
「残ったのはわたしだけか…」
その事実だけが重くのしかかる。明日になるか、もっと先になるかはわからないけど次に消えるのはわたし。
「うーん…、まあ成せば成るってか」
今は今やれることをしよう。事務員の仕事をして、食堂のお手伝いをして、みんなにそれとなく感謝の言葉を言おう。ふと、こんなにもすんなりと受け止めている自分に驚いた。
「最近のわたしおかしいなあ。まあ抗ってもどうしようもないんだけどさ」
自分に言い聞かせてるみたいだ、と苦笑した。とりあえず布団を敷いて寝る準備をする。あくまでもいつも通りに。
察する100918
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短い