ひなたぼっこ | ナノ


▽ びっくり

今日の授業は町に出ての実習。一人で行うものだったけど、案外楽に終わって後は忍術学園に帰るだけだった。林の近くを通りかかった時、茂みの中から声が聞こえた。中に入って様子を見てみると、山賊らしい男が二人と変な着物の少女が一人。しかも少女の方は幼く見えたし、明らかに嫌がっている。流石に見逃す訳にはいかないので、少女が打たれたのを見てから苦無を男に向かって放った。見事命中。残った男は相当混乱しているらしく、少女の腕を掴んだまま走り出したため、少女は転びそうになる。素早く苦無をその男に放って、少女を支えた。その身体は小さくて、思った以上に細くて軽かった。


「おい、大丈夫か?」


声をかけると、少女は俺の顔を恐る恐る見て固まった。目を見開いて、まるでありえないとでもいうような驚きの顔。なぜこんな反応をされるのかわからなかったが、とりあえずどうしたのか聞いてみる。少女は慌てて離れようとするが、足を捻ったらしくふらつく。


「顔の腫れも酷いし、送るから家教えて」
「…家、ないんです」
「、は…?」
「信じてもらえないと思いますが、わたしはこの世界の人間じゃないんです。だから家無くて…」


いきなり意味のわからないことを言い出した。既に頭を打っておかしくなったのだろうか。少女の口から出るものは到底信じられるような内容ではなかったが、先程の山賊に対して何もできなかったのを見ると、忍者ではないだろう。恐らく一般人。この少女の反応を見ると、嘘ではないような気がする。悲しそうに伏せた目からは少し涙が潤んでいる。到底演技には見えなかった。


「とりあえず忍術学園に行く。そこに行けばわかるだろ」


怪我もしてるし、このままほって置く訳にはいかなかった。少女の話が本当ならきっと行く宛てがないだろうし。それに、どこかこの少女を信じてみようという気持ちが生まれている。近くに落ちていた見慣れない入れ物(着物から見てたぶんこの少女のもの)を拾ってきて、彼女を横抱きにした。少女は最初は暴れたけどすぐに諦めたのか、首に巻き付いてきた。そういえば、と口を開く。


「名前」
「名前…あ、」
「俺は久々知兵助」
「わたしの名前は渡邉えりかです!」


にっこりと笑ったえりかを見て、どこか心が和んだ。さて、学園長はこの少女を見てどんな表情をするのだろうか。判断を任せよう。

100621

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