ひなたぼっこ | ナノ


▽ 火薬委員会

二日程休むと、擦り傷と言っても新野先生や伊作くんが調合してくれた(らしい)薬のおかげで治りかけていた。部屋の中を歩けるようになったから、新野先生にお許しを頂き漸く自由に外に出られるようになった。水仕事は許しません、と言われてしまったので(そんな大事じゃないんだけどな)今日は事務室で帳簿を見ながら棚の整理をする。この時代は確か室町でわたしがいた時代(世界)とは文字の形が違う筈なのに、なぜか読める。何となく、なのだがそれで合っているらしい(書けないけど)。今日は終わりだと事務のおばちゃんに言われてもう夕方なのだと知らされた。食堂のおばちゃんに偶然会った時に話しをすれば「今は有休中なんだからしっかり休みな」と言われてしまった。復帰した際にはお菓子でも作って礼をしようと思う。


「小松田くん、いるかい?」
「あ、さっき出門票持って出て行きました」
「あら、そうなの?これ火薬委員会の出庫表なんだけど、混ざってたのよね。よかったら持っていってもらえないかしら?」
「はい、わかりました」


表を受け取って部屋を出ると、まだそれなのに明るかった。この時間ならまだ委員会はやっているだろう。事務のおばちゃんにはそのまま上がっていいと言われたので急ぎ足で焔硝蔵に向かった。


***********


「あれ?」


焔硝蔵にはタカ丸くんしかいなかった。彼は彼で何やら櫛や鋏等を磨いているのだが委員会をしているわけではないらしい。


「タカ丸くん」
「あ、えりかさんこんにちは!」
「うん、こんにちは。他のみんなは?」
「みんなは出庫表を探しに行きましたー」


ありゃ、すれ違いになってしまったみたい。とりあえずタカ丸くんに出庫表を渡して戻ろうとすると、不意に呼び止められた。


「えりかさん、髪伸びましたね」
「そう?でも最近厚くなったんだよね」
「それならこの髪結いにお任せを!」


既に準備万端なタカ丸くんがにっこりといい笑顔を向ける。どこからその布出したの。まだ委員会の時間でしょ、と断れば逆に泣かれてしまったので仕方なく切ってもらうことに(まあ半分は期待してたんだけど)。


「うわあー。やっぱり思ってた通り、いい髪質ですねー!何かやってます?」
「くせっ毛で悩んでるんだけどな…。今は特にやってないよ」
「やってないんですか?いいなあ、一本一本が細いし綺麗」
「……お世辞言ったって何も出ないよ」
「やだなあ、お世辞じゃありませんよー」


ああ、さすが髪結いさん、敵わない。ちょきちょきという心地好い音と、タカ丸くんの指が髪に触れる度に眠気が襲う。髪触られると気持ち良くてどうしても眠くなってしまう。うつらうつらし始めた頃、終わりだという声が聞こえて慌てて目を開く。


「どうですか?」
「うっわ!すごいさらさらになってる!それに軽くなったよ!ありがとうタカ丸くん!」
「えへへ。どういたしまして」


ふにゃりという笑い方は彼に似合う。可愛らしい15歳にこちらもつられて微笑んだ。ここでヘムヘムの鐘の音が鳴り響いた。どうやら夕飯の時間らしい。兵助くんと伊助くんと三郎次くんも帰って来て、結局今日の委員会は何もしないで終わった。


「えりかさん、このあと夕飯だろ?一緒に食べないか?」
「え、いいの?」
「当たり前だろ」


三郎達もいるからな、と言いながら手を引かれた。え、兵助くん、これ無意識かな。だったらとんだ天然タラシだ。かわいい顔して恐ろしい(わたしの脳内限定だが)。手を繋ぎながらわたしの歩幅に合わせてくれる兵助くんが妙に男らしく見えてどきどきした。


火薬委員会


(…兵助くんいいなあー…)
(なんか最後の最後にいいとこ持って行きましたよね)
(無意識ってとこが更に恐ろしいです)
(んー、まあとりあえずご飯食べに行こうか)


ごめん下級生空気
100714

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