ひなたぼっこ | ナノ


▽ ただいま

しばらく揺られていると、河原に出た。ここで合流する予定らしい。少し進むと、水色の何かが動いているのが何となく見えた。近づくと、見慣れた子供たちが。


「えりかさん!?」
「えりかさんだ!」
「えりかさーん!」
「よかった無事でー!」


こちらに気づくと、まるで子犬のように周りを取り囲んだ。待って、何で一年生までいるの。わたしが何も言えずにいると、それを察したらしい伊作くんが乱太郎くんに声をかけた。


「乱太郎、明かりと医療道具を持ってきてくれないかな」
「あ、はーい!」
「皆も、土井先生が号令をかけてるよ」
「えー!」
「僕えりかさんと一緒にいるー!」
「しんべヱずるいよ!僕も!」
「しんべヱ!喜三太!お前らいい加減にしろ!」
「「はーい…」」


作兵衛くんが二人を宥めた。作兵衛くんがいるということはつまり三年生までいるということだ。あれかな、合同リクリエーションとかでついでで助けてもらったとかそういう流れかな。そうだよね、わたしなんかのために皆出てくるはずないもの。いつの間にか手当てに入っていた伊作くんが顔を上げた。


「えりかさん、変なこと考えてませんか?」
「え?」
「学園の皆がえりかさんを助けたくて来たんです」
「私達はえりかさんにいつもお世話になってるのに何も返せなくて」
「ドクタケから救い出すなんて簡単なんですよ」
「そ、んなことない…!むしろわたしが沢山みんなから教えてもらったりして、返さなきゃいけないのはわたしの方なのに…っ」
「十分ですよ」
「えりかさんは慣れない環境で必死に生活してるんだ。俺たちに気を使ってこんなに怪我までしてるのに…」


そう言うと、兵助くんは包帯の巻かれたわたしの手を取った。怪我をしたのは掌だけだったけど、それ以前に指には鞄に入っていた絆創膏が貼られている。料理はできると言っても毎日大量に作ったことなんてなかったし、洗濯も慣れてなくて手荒れが酷かった。今までがいかに楽で幸せだったか思い知らされる。その指の上を兵助くんの綺麗な指が滑って、不謹慎だけどどきりとした。


「えりかさんはもう少し自分を大切にしてくれ。自分を否定しないで」
「兵助くん…」
「えりかさんはもう忍術学園の一員なんだから」


じわりと目の前が揺らいだ。周りを見ると、いつの間にかみんなこちらを見ていて、にっこりと微笑んでいる。堪えられなくなって下を向くと、頭を撫でられた。


「さ、帰りましょう」
「そうだね、三郎。六年生も戻ってきたみたいだし」
「行こう、えりかさん」


手を引かれて立ち上がると、皆の顔がよく見えた。きっと、今のわたしはとても酷い顔をしてるに違いない。でも笑ってくれるんだ。なんて幸せなんだろう。部外者なのに、疑わないでくれる彼らに出会えて本当によかった。


「ありがとう…!」


わたしの居場所が見つかりました。





ただいま



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