ひなたぼっこ | ナノ


▽ でか頭と小娘

ひやりとした感触に目が覚めた。まだ起きない頭にどこかで聞いたことのある声が響く。


「私は食堂のおばちゃんを連れてこいと言ったんだ。なのに何故こんな小娘を連れて来るんだ!」
「す、すみません…。でも割烹着着てたし、食糧の倉庫から出てきたので…」
「言い訳は聞かん!」


煩い怒鳴り声が頭に響く。どうやら殴られたみたいで一部がずきずきと痛んだ。思わず唸り声をあげてしまって、それに気づいたらしい相手がこちらを向いた。あれ、あの特徴的で大きな頭は…


「おはよう、お嬢ちゃん」
「(稗田八宝菜!!?)」


頭でっけえ!てか今気づいたけどここ牢屋じゃない?しかも手首結ばれて動けないし。よく考えたらドクタケに誘拐されたらしい。まさかこんな形でドクタケと関わるとは。わたし冷静すぎないか。


「一体何なんですか」
「我々はドクタケ城のドクタケ忍者だ。食堂のおばちゃんを連れて来ようとしたのにうちの部下が誤って君を連れてきたようだ。済まなかったね」
「わたしに謝っても仕方ないでしょう。何でおばちゃんを誘拐しようとしたんですか」
「それは言えないな」


イラっ。つーんとそっぽを向いた八宝菜にいらついた。ガンっと柵を蹴ると、八宝菜と部下(記憶が正しければ風鬼)はびくりと身体を震わせた。普段はチキンだけどキレたら手加減はしない。


「言いなさいよ」
「い、言えな「言いなさいよ


にこにこと笑いながら言ってやると、今度は涙目になっている。そんなに強く言ってるつもりはないんだけどな。情けないな臆病者め(酷いとか言わない)。


「…う、うちの殿がまた食堂のおばちゃんの料理が食べたいと言い出してな」
「それで誘拐しようと?阿呆らしい」
「そもそもお前は誰だ?」
「今更か」
「う、うるさいっ!」


あれ、いつの間にか立場逆になってる。まあいいや。とりあえず名前とあそこにいた経緯を話すと、興味なさ気にふーん、と言ってから風鬼におばちゃんを連れて来いと命じた(ムカつく)。


「ちょっとやめなさいよ!」
「お前には関係ない」
「大有りだよ!間違いでも誘拐されたんだから関係ないわけないじゃない!」
「ふん、だったらお前飯でも作れるのか?」
「作れるよ!料理の一食や二食!」
「だ、だったらお前が代わりに殿へ食事を作れ!」
「やってやろうじゃない!」


いつの間にか趣旨が変わってしまったけど、おばちゃんが連れて来られる心配はなくなったからよしとしよう。さて、わたしはどうしようか。


でか頭と小娘

100222

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