ひなたぼっこ | ナノ


▽ 生物委員会

………、
洗濯物を干し終わった時だった。どこかで鳴き声が聞こえた気がした。周りを見渡してみても何もいない。気のせいかな、と篭を持ち上げて室内に戻ろうとしたとき、また聞こえた。小さくて聞き取りにくいけど聞き間違いじゃない。わたしは持ったまま鳴き声が聞こえた方に行ってみた。どうやら木の根元にいるらしい。驚かさないようにゆっくり近づいてみる。そこには泥だらけの子犬がうずくまっていた。


「わあ、かわいい!大丈夫?」


犬が大好きなわたしはすぐにその子を優しく抱き上げた。服が汚れるのは気にしない。人懐っこいみたいで噛んだり引っ掻いたりはしないから一安心。でもお腹が空いているらしく力は弱々しい。


「待ってね、まずは体を綺麗にしなきゃ!」


水場に行って丁寧に洗ってやると、最初は嫌がったけど途中から楽しそうに水浴びをしていた。ちょうど腰に掛けていた布で拭くと、綺麗な毛並みが現れた。この様子を見ると飼い犬のようだ。食堂から持ってきた胡瓜をあげながらこのあとどうするかと考えていたら、後ろから声を掛けられた。


「えりかさん、何してるんですか?」
「おや、ハチくん達。いいところに来た!」
「?」


そこにいたのはハチくん率いる生物委員会の面々。一緒に飼い主を探してもらおうと、子犬の事を話した。するとハチくん達は快く頷いてくれた(さすが!)。


「町から来たのかな…」
「でも学園の敷地内にいたならその確率は低いと思いますよ。あるとしたら先生達か、動物が好きな人…」


みんなで歩きながら首を捻る。でも犬を飼ってる何て聞いたことがない(ヘムヘムは別)。とりあえず小松田さんあたりに聞いてみたら案の定知らないらしい。他の先生方にも聞いてまわったが、誰も知らないという。半ば諦めかけた時、三治郎くんがあっ、と声をあげた。


「そうだ、きり丸!」
「あぁそうか、きり丸がいたか!」
「え、え?」


三治郎くんが声をあげるとすぐに虎若くんが一緒に手を叩いた。え、何?他のみんなが分からずに二人を見ると、彼等は二人で説明してくれた。


「きり丸、最近子犬の世話するバイトを引き受けたって言ってたから」
「たぶんその子じゃないですか?」
「あ、そっか!その可能性もあるよね!」
「きり丸だったらさっき井戸の所にいましたよね」
「よし、行こ!」


半ば早足で行くと、井戸の辺りでキョロキョロしているきり丸くんが見えた。


「きり丸くん!」
「あれ、えりかさんと生物委員会のじゃないですか。あれ、その犬…」
「この子、きり丸くんが預かってる子犬じゃない?向こうにいたんだけど…」
「あー!はなちゃんっ!」


きり丸くんに渡すと、やはりそうだったらしい。どうやら井戸の近くに繋いでいたけど解けて逃げてしまったらしい。無事飼い主(?)が見つかって一安心。きり丸くんはお礼に今度町に行こうと誘ってくれたので、そういえば一度も行ったことがないので喜んで約束した。じゃあ学園長先生に許可取らなきゃな。生物委員会のみんなにもお礼にデザートを作ってあげる約束もした。


生き物は大切に
(愛犬を思い出しました)


090716→100120

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