▽ なんてそれは、
今日は町に出ての実習があった。みんなバラバラだったが、無事に終わらせて帰って来ると、竹谷が饅頭を買ってきたから皆で食べようと言った。ちょうど将棋もあるし、私達の部屋に集まることになった。全員することも全部終わらせて、あとは竹谷が饅頭を持ってくるのを待つだけ。それにしても遅い。
「ハチ、遅いね」
「そうだな…。三郎、もう先に始めないか?」
「だな。やるか」
私と兵助はさっそく将棋を始めた。雷蔵は大抵は見てる役。ぱちぱちと打ちながら、ふとえりかさんの話題を切り出す。
「なぁ兵助、えりかさんってどう思う?」
「何だよいきなり」
「別に。最初にえりかさんに会ったのって兵助だろ?それにあの人、私達を一発で当てたんだぞ。興味持たない訳がないだろ」
そう言うと、兵助はうーん…と唸りだした。初めて会った時、兵助と仲良く話していたのを思い出す。
「(まさか“違う世界から来た人”なんて言えないよな…)いい人だよ。あと何か和む」
「和む?どこが?」
「三郎、失礼だよ…。でも僕もそれは思ったかな。どこと無く暖かい雰囲気があるよね」
「そんな感じ」
「……ふぅん」
私も何となくそう思ってたから否定はしない。あんなちびでチンチクリン(酷)なのに、まるで前から私達を知っていたような言い方。いや、考えすぎか。話しを止めて再び将棋に集中し始めた頃、竹谷が遅れて入ってきた。
「ハチ遅い…ってえりかさん!?」
「え、えりかさん!?」
まさか今まで話題にしていた本人が現れるとは思ってもみなかったから、声をあげてしまった。竹谷の饅頭に釣られたようだ。ナイスタイミング、竹谷!えりかさんは兵助の隣に腰掛けた。私達は再び将棋を始め、饅頭を頬張りながら談笑した。私と兵助が竹谷と雷蔵と場所を交換した頃、えりかさんが静かになった。不思議に思って顔を覗こうとすると、いきなり肩に頭が乗った(は!?)。
「えりかさんどうし…って寝てる」
「は?」
私の肩に乗る髪は柔らかくいい匂いがする。頭を撫でてみると、寝間着の袖をえりかさんが引っ張った。その姿がかわいかったのは否めないな…。
「ん…寒い」
「寒い?布団敷きますか?」
雷蔵が話し掛けると「んー…」と唸った。私達は苦笑してからその場をかたずけ始める。雷蔵が自分の布団を敷いてえりかさんを起こそうとするが、唸るだけで一向に起きる気配はない。仕方ないから私が横抱きにすると、驚くほど軽かった。歳のわりに小さくて軽いのですぐに折れてしまいそう。
「…ハチ、この饅頭酒入ってるぞ」
「本当だ。えりかさん苦手だったのかな…」
「そろより三郎と雷蔵は今晩どこで寝るんだ?」
「私はここで寝るよ。雷蔵は兵助のとこでも良くないか?」
「……ちょっと待て三郎」
だって雷蔵の布団はえりかさんが使ってるから今晩はここで寝れるの私しかいないだろう。
「何でお前はここに残るんだよ。夜に二人きりなんて危ないだろ」
「何言ってんだよ、そんな下心ないって」
「こういう時の三郎は信用できないよ」
「俺も同感!」
「俺も」
ふん、下心あるわけないじゃん。気になってはいるが、私はもっとナイスバディーなお姉さんが好みだ。
「心配だから俺もここで寝る」
「え、何で兵助が」
「……」
「僕ももちろん残るよ!僕達の部屋だし」
「じゃあ皆ここで寝るか!」
「マジか…」
私はため息をついた。まあ心配されるほど皆から想われてるんだろうな。今回は諦めよう。
「ところで布団一つしかないけど…」
「「「…………」」」
その雷蔵の一言で再び争奪戦が始まったのは言うまでもない。
無防備過ぎ
(襲われても文句は言えないよ、)(……こんなに騒いでも起きないな)
(((………)))
‐‐‐‐‐‐‐‐
会話が多くて誰が喋ってるのかわかんない…
ちなみに基本「さん」付け
六年生と久々知以外は敬語
時代は無視
090429→100120