▽ おまんじゅう
わたしがこの世界に来てから早くも10日が過ぎた。まだ道に迷ったり蛸壷に落ちたりと大変だけど、なんとか慣れつつある。最初はあまり話し掛けて来なかったお年頃の二、三年生も、最近ではお茶を飲んだり外で遊ぶくらい仲良くなった。みんなの笑顔がわたしの元気の源でっす!だらだら(鼻血)今日はいつもより早めに夕食が済んで、お風呂を借りて(普段はくのたまのお風呂を使ってる)あとは寝るだけだった。
「あ、えりかさん!」
「あれ、ハチくん」
この10日間で一番仲良くしてるのは、わたしを最初に見つけて助けてくれた兵助くんがいる五年生。呼び方なんてこの間に好きに呼ばせてもらってる(他の学年も然別)。ちょうど五年長屋に近かった所を通り掛かったからか、反対側からハチくんが歩いて来た。
「風呂帰り?」
「そうだよ。ハチくんは何してたの?」
「俺はちょっとこれを取りに」
そう言って手に持っていた袋を開いて見せたのはたくさんの饅頭。まさかこの量を一人で食べるのか、とハチくんをじとっと見ると慌てて首を振った(焼きそばが揺れる…)。
「俺だけじゃないですよ!皆で食うつもりだったんです。今雷蔵達の部屋に集まってるんです」
「そっか。びっくりした!」
「俺一人じゃ食べ切れませんって!あ、よかったらえりかさんも来ます?」
「え、いいの!?」
何とも嬉しいお誘い。ちょうど小腹が空いてきた頃だし、快く誘いに乗った。
「もちろん!じゃあ行きますか」
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「持って来たぞー」
「ハチ遅い…ってえりかさん!?」
「え、えりかさん!?」
ハチくんが戸を開けると、他の三人が将棋をしていた(何であるの)。こちらを見ると、皆驚きの声をあげた。
「何でえりかさんがいるんだ?」
「俺が誘ったんだ。男四人じゃむさ苦しいだろ?華があった方がいいじゃねぇか」
「華じゃないけどお邪魔していい、三郎?」
口調もあるけど、三郎と雷蔵くんを見分けられるようになったのは愛の力だと思う。三郎は少し考えるそぶりを見せたあと、ニヤリと笑いながら頷いた(気持ち悪いよ)。部屋に入れて貰って、兵助くんの隣に腰掛ける。兵助くんが一番仲いいかもね。そういえばよく一緒にいるな。
「えりかさん寒くないか?」
「だいじょーぶ。さっきお風呂入ってきたばっかりだからまだ温かいよ」
ハチくんがわたしの隣に座って、雷蔵くんと三郎が向かいに座る。思えばこの子達14歳なんだよね。わたしの弟と同じに見えないや。わたしは饅頭を食べながら四人と談笑した。この子達はナチュラルに接してくれて本当に楽しい。顔もいいから人気があるのも頷けるよ(現代の話)。そのあとはどうやら饅頭に少しお酒が入っていたみたいで、わたしはそのまま寝てしまった。朝起きたら布団に運ばれていて、四人は床の上で寝ていた(悪いことしちゃったな)。まだ早いから、羽織って来た着物を近くにいた兵助くんに、あとの三人には布団を掛けてから静かに部屋を出た。まだ少し肌寒かったけど、仕方ないからそのまま自分の部屋に戻った。
鈍感=危険
(それを知らないのは誰?)(そういえばわたし無防備過ぎたな…)(ま、何ともないし大丈夫っしょ)
微くくち贔屓なのは気のせい
お酒というよりただ普通に疲れて眠っただけ
090425→100120