ひなたぼっこ | ナノ


▽ 疑

噂には聞いていた『小さい年上の女の人』という人間。伊作は会って話をしたことがあると聞いて、どんな人なのか聞いてみると「小さい年上の女の人だよ」と苦笑しながら言われた。女なのはわかったが、小さい女の人というのは何なのだろう。しかもこの中途半端で急な時期に来たことが不思議でならない。隣の部屋に住むことになったらしいが、私達が男だというのに気を遣ったのか挨拶には来なかった。寝首をかかれるのではと警戒していたが、部屋からは殺気は感じられず本当に一般人らしい。


「隣に女が越してきたようだな」
「らしいな。伊作が言うにはただの一般人らしいが、警戒しとくに超したことはない」
「それもそうだが、あちらに警戒心は全く感じられんぞ。どうせすぐに会うんだからそんなにイライラする程でもないだろ」
「……そんなに殺気立ってるか?」


文次郎に言われて初めて気がついた。ただの女相手に何をしてるんだ私は…。まだまだ未熟だ。まあ文次郎も警戒はしているらしいが。



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今日は午前中から実習があって、朝から隣人と会うことはなかった。食堂で会うことになるだろうからいいか、と思っていたのにどうやら入れ違いになったらしい。午後の授業はなかったからそのまま一旦部屋に戻ったが、小平太が急に煎餅が食べたいと言い出したから食堂のおばちゃんに貰いに行くことになった。もちろん私達は無理矢理連れて来られたのだが。食堂に着くと、窓側のテーブルに顔を埋めている人がいるのに気がついた。それにみんな気がついたらしく、「あ!」と伊作が声を上げた。


「おい、誰だこいつは?」
「昨日言ったえりかさんだよ」


あぁこいつが噂の隣人か。見ると12、3つ程度の幼い少女だ。静かに寝息を立てているが、不意に唸りだした。もしや起こしてしまったか、と顔を覗こうとするといきなり飛び起きた。


仙ちゃん!!
「「「「「!?」」」」」


突然のことで対応出来ずに後退りしてしまった(情けない!)。だがなぜ私の名前を知っている?問い詰めてみたら、少し吃りながら綾部に聞いたと言った。彼女が名乗ったので私達も名乗ったが、どう見てもくの一に入れる年齢。それに疑問だったこの時期の事務員としての採用について聞いてみた。家が無くなったという所に疑問は残るが、そこはあえて触れないでおこう。言っていることは本当らしいし、殺気も警戒も感じられない。


「(まぁ様子を見るか)」


どこと無く話を聞いていて和む少女だ。温かい雰囲気があるような気がするのはなぜだろうか…?




それはまるで
(母親のような笑顔)






090403→100119

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