荒木荘

ブランドー家、というかDIOが所有する物件の一つであるアパートの荒木荘。広くはないが個室の多い一室に、何人かが一緒に住んでいる。というか初めはそれぞれの部屋に住んでいたのだが、いろいろ訳ありな人たちらしく、なあなあの内に一つの部屋で暮らすようになったらしい。詳しいことは知らないけど。

そんな部屋になぜわたしがいるのかというと、ジョルノの友達であるドッピオくんの家庭教師をしているからだ。


「これはどうすればいいですか?」
「ここはね、さっきの公式を使えば簡単なんだよ」
「あ、成る程!」


ドッピオくんは素直で飲み込みが早く、教えたこともすんなり覚えて教えてて気持ちがいい。何より天使。笑顔が可愛い。わたし子供が好きなのかもしれない。この間ブラコンって友達に言われたけどそれもあるかもしれない。でも天使だからなんだっていい。


「ドッピオ、まだか…」
「ボス、まだです。もう少し待っててください」


そして狭い部屋の隅に丸くなって座っているのは彼の兄であるディアボロだ。刺青に網みたいな服で初めて会った時は引いた。ドッピオくんの兄だと聞いて目眩がした。ドッピオくんはこのまま育ってくれ。


「……うん、正解!今日の勉強はこれでおしまいだよ」
「はい!ありがとうございました!」


嗚呼天使。ぎゅっとしたいのを抑えて頭を撫でると、顔を赤くして微笑んだ。うちにおいで。


「ディアボロ、いるか」
「ゲェ…ッ」
「ん?なんだ洸、来ていたのか」


ノック(と言っても襖だけど)もせずに堂々と襖を開けて入って来たのは黒い褌に小さな装飾だけの肌色強めな格好をした変態、もといカーズだった。ちなみに変な声を出したのはわたしではなくディアボロだ。


「久しいな。相変わらず旨そうだ」
「たった一週間ですよ。何より毎回セクハラ発言するのやめてください」


ほぼ裸で色気ただ漏れとか視界のセクハラで充分だ。一週間というのは家庭教師をするのが週に一度だけという意味である。その曜日だけ、仕事は夕方で終わるようにしてもらっているのだ。


「おや、洸さん」
「あ、プッチさん今晩は。おかえりなさい」
「ああただいま。そうか、今日は家庭教師の日だったね」


たまたま開いてる襖から中を見たプッチが声を掛けた。神父である彼は荒木荘の中でも常識人で、彼がきて少し安心した。ただ彼はDIOがいると別なのでその話は割愛する。


「ゼリーを買ってきたんだ。多めに買ってきたから食べて行くといいよ」
「そんな、お構いなく!」
「いつも迷惑をかけているからね。気にしなくていいよ」


プッチさん、神々しい。本当DIOがここにいなくてよかった。DIOの話になると乙女になるんだもの。かっこいいプッチさんでいてください。


「ゼリーもいいがお前の血を」
「貴様ら、喧しいぞ…」


カーズさん今何か言った?恐らく隣の部屋で寝ていたのだろう、僅かに乱れた髪を直しながら顔を覗かせたのは、某世界の大国のヴァレンタイン大統領だ。何でここにいるのかっていうか住んでいるのかは謎だし面倒なので聞かない。噂では部屋の押入れがどこかと繋がってるとかそんなことを誰かが言ってたような言ってなかったような。とりあえず深く考えるのをやめた。


「すみません、お邪魔してます」
「ああ、貴様か…。これをやろう」


そう言ってこちらに投げ渡して来たのは可愛らしい封筒。中を見るとピンの諭吉様。


「だから毎回お金を渡して来るのは何故なんですか…」
「何、気まぐれだ。私の気が変わらない内は貰っておくといい」
「はあ、ありがとうございます…」


何が彼に気に入られたのかわからないが毎回会うたびにこうしてお小遣い(と思うようにしてる)をくれる。金持ちなのに何でこんなボロアパートおっとっと、に住んでるんだ。


「折角だからご飯も食べて行きませんか?」
「え、そこまでお世話になるのは悪いよ。吉良さんも帰ってくる頃でしょ?」
「たぶん言えば大丈夫ですよ」
「今帰りました」
「お、噂をすればだな」


お疲れなのか少し窶れた吉良さんが顔を出した。挨拶をすれば彼も返してくれる。この荒木荘の管理を任されていて、今は何故かこの人たちの世話までもしている苦労人だ。親近感が沸くのはわたしだけだろうか。


「そういうことなら構わないよ。商店街の福引で肉が当たったので今日は焼肉にしようと思っていたんだ」
「焼肉だと!?」
「珍しい!ならばわたしのワインを用意しよう」


焼肉にワインなの?嬉々として大統領は部屋に戻って行き、ディアボロはまだ部屋の隅でそわそわし出した。そんなに楽しみなのか。


「たくさんあるから食べて行ってくれないか。あと君がいてくれるとこいつらの制御ができて助かる」


たぶん本音は後者だろうけどそれは言わずに頷いた。ドッピオくんが隣でわーい!と喜んでいてわたしも嬉しくなる。


「では早速準備するとしよう」
「あ、手伝います」
「ああ、ありがとう」


そう言って彼はわたしの頭をぽんぽんと撫でた。撫でることはあっても撫でられるのは慣れていない。少し気恥ずかしくなり下を向いた。とりあえず上着のポケットからちらっとのぞく指は見ないことにしよう。今日も夕飯は賑やかになりそうだ。


140922
これにDIOとたまにディエゴが加わるのがいつもの荒木荘です。
top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -