徐倫

夕方、学校が割りと近くにあり、値段もリーズナブルなため学生が多くなる。と言っても目立つ場所にではなく少し小道を入った所にあるため、それほど有名ではない。わたしの働くカフェはそんな所だ。高校時代、何となく入ってみたらとても居心地がよく、冗談で働きたいと言ったら人出が足りないとかで即行バイトからの社員になった。大学に行く予定ではなかったからいいけど。


「それでね、洸さん…」
「うん」
「承太郎兄さん、またわたしに告白した男子を絞めたみたいなの。本人に言っても無言だし…どうしたらいいのかしら」
「……うん」


高校生の不良に絞められるとかそれトラウマにしかならないよね。妹を想ってのことだとはわかっているけど流石にやりすぎだし、徐倫もお年頃なんだから自由にすればいいのに。シスコンこわあ。


「きっと承太郎は徐倫が心配なのよ。自分より強いやつじゃないと認めない的な?」
「承太郎兄さんより強い人なんてジョナサン兄さんと、一応ジョセフ兄さん以外にいるのかしら…」
「あ、うんごめん、いないかも」


ジョセフに一応が付いているのは気にしないことにして、そもそも承太郎が強すぎるのでこの条件だと徐倫は誰とも付き合えない。その前に告白する男の子達が可哀想すぎる。


「そもそも徐倫は好きな子いるの?」
「えっ」


あら?その反応はもしかしているのかな?ニヤニヤしてみると、彼女は顔を赤くして下を向いた。可愛い反応ありがとう!!


「その、何回も告白してくる物好きなんだけど、」
「(その締められた子かしら)」
「結婚してくれとか言うんだけど、」
「(ち、中学生だよね?随分情熱的ね…)」
「でも悪いやつじゃないの。この間ナンパからも助けてくれたし、重い荷物も持ってくれたの」
「あら、いい子じゃない。何か問題あるの?」


そこでまた下を向いてごにょごにょと口を濁した。承太郎に締められるのを見るのが嫌なのか。


「気付くとどこか近くにいるし、わたしの好きなものも嫌いなものも全部知ってるしこの間家の近くまで後ろ着いて来てたの」


それを見た承太郎兄さんが殴ったのよ。複雑な顔をした彼女を見てわたしは軽く目眩がした。それってストーカーゲフンゲフン、愛が重いのは2人共だったってわけね。


「でも、何回も砕かれても折れない彼に、惹かれてるの…」
「…うん。なんて言うか、もう少し時間が経って何も変わらなかったらわたしが直接出向くわ」


解決策がわからないからとりあえず先延ばしにする。承太郎が折れるか彼が折れるか徐倫が行動を起こすかわたしが警察に通報するかどれが起きるかは時間が解決してくれることを祈る。愛って怖いね。


「洸さん…!やっぱりこんなこと言えるの洸さんしかいないわ…!」


そう言ってくれるのは嬉しいけどこの問題はとても、難しいよ少女よ…。

140918
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