お昼寝しよう2

(仗助視点)


徐倫の通う中学校(つまり俺の母校)はそれほど遠くはない。高校から駅までの途中にあり、さらに俺のバイト先であるカフェも、少し小道を行くがある。最終的に駅に向かう道は同じなので、バイトが入ってない日はたまにこうして徐倫と帰りが一緒になるのだ。


「今日は洸さんの家に寄るの?」
「んー、いや、今日はジョナ兄が休みだったはずだからそのまま帰る」
「そうね」


お前ら兄弟本当に仲良いな、なんて億泰に言われたがこれが当たり前なので別段気にしていない。俺らを育てた環境かジョナ兄の性格もあるだろう。洸さんの影響もありそうだが。





家に着くと、ジョナ兄の靴がない事に気が付いた。我が家の靴は必ず靴箱に入れる決まりになっており、それぞれ棚が分けられている。これで誰がいないかわかるのだが、定助の小さな靴はあるのでジョナ兄だけ出ているのがわかる。


「あ、洸さん来てるのね」


男用と女用で分けられている靴箱の、徐倫が開けた方には、洸さん用の棚もある。それは最早来るのが当たり前になっているからなのだが、そこに申し訳程度に一つだけ大人っぽい、シンプルなパンプスが置いてあった。彼女の家に寄らなくて正解だった。


「ジョナ兄さんは大学かしら?」
「たぶん。でも洸さんと定助の声、聞こえねぇな」
「確かに」


二人で首を傾げ、とりあえずリビングを見てみるが誰もいない。スケッチブックとクレヨンがそのままになってる辺り、遊んでそのままどこかに行ったことになる。物を出しっ放しにするのは彼女がよくやるがこの家では滅多にやらないので珍しい(自分の家ではだらしないのだが)。


「仗助、仗助」
「どうした?」
「しーっ!こっちきて」
「?」


何かを見つけたのか、楽しそうな徐倫が小声で呼んだ。それに習って音を立てずについて行くと、そこはジョナ兄の部屋だった。何事かと中を覗くと、ジョナ兄達の大きなキングサイズのベッドに横になる4人の姿。


「ジョルノまで一緒だなんて、珍しくない?」


ジョニィの隣にうつ伏せに寝ているジョルノは普段クールに事を見ているような奴だ。一緒に昼寝をするようなキャラではないから2人で面白くなって静かに笑いあった。今日は早めに帰ってきたので外は綺麗な夕焼けで部屋の中まで優しい色に染めている。


「ふふっ、私ここね!」
「あっおい!」


ごそごそと洸さんの隣に寝転んだ徐倫はドヤ顔をこちらに向けた。何だよ!別に羨ましくなんかねぇぞ!この野郎!ぐっと我慢し、でもこの空間は本当に心地よさそうで、俺も徐倫の反対側、ジョルノの隣に寝転んだ。姉のような存在である彼女は、俺達がもっと小さい頃も同じように寝かしつけては一緒に寝ていた。それを思い出して小さく吹き出す。


「ちょっとだけなら、いいよね」


徐倫の声に、俺も同じ気持ちで小さく返事をした。



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(承太郎視点)



家に帰ると、静かだということに違和感を覚えた。靴箱には弟達の靴があったし、ジョニィやジョルノはいいとしていつも誰かしらの声は帰ると聞こえてくるのだが、今日はそれがない。リビングにも誰もいないし、皆自分の部屋にいるのだろうか。静かなこの家はただでさえ広いのに、さらに大きく感じる。

自分も部屋に繋がる廊下を歩いていると、不意にあいつの声が聞こえた気がした。俺の耳はいい。そちらに向かうと、ジョナサンの部屋だった。ベッドにはこの家の弟達と、愛しい彼女が眠っていた。


「……………」


いつからだろう。俺が彼女に敬愛以上の想いを抱くようになったのは。初めて会ったのは小学生の頃で、ジョナサンが連れてきたのだ。今思えば一目惚れ、だったような気がする。幼いながらに洸は笑顔が綺麗で、さらに付き合いの長いエリナよりとはまた違った魅力を感じた。小学生にとっては高校生も十分大人だった。

そうして俺の初恋は未だに続いている。中学校に入ると身長はみるみる内に伸び、あっという間に洸を追い越した。兄貴達に負けないようにと鍛えた。ただ途中で真面目にやるのが怠くなり、周りからは不良というレッテルを貼られるようになったが、彼女は特に咎めることなく「好きにしたらいいよ」と笑ってみせた。ますます好きになった。

キングサイズといっても6人が寝ていればいっぱいになる。しかし徐倫の隣に横になる程度には隙間は空いていた。肘をついて妹と洸、そして弟達を見る。その寝顔はあどけない。ふ、と頬が緩むのが自分でもわかった。洸の髪を軽く梳くと、擽ったそうに小さく唸った。



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(ジョナサン視点)



「ただいまー!…?」


教授から急に来てくれと言われ、洸に定助を任せて家を出た。せっかくの休みに来てくれたのに子守を任せてしまって申し訳ない。近くの商店街で夕飯の材料を買って家に着く頃にはすっかり暗くなっていた。

玄関のドアを開けると、家の中は静かな上にリビングの電気が消えていた。不思議に思いながら買ってきた物を冷蔵庫にしまい、誰かはいるだろうと部屋に向かうと、廊下は電気がついていた。そして僅かに開く自室のドア。ゆっくりと開けると、ジョセフが立っていた。


「ジョセフ…?帰っていたのかい」
「ジョナサン!しーっ!」
「え?」
「いいからいいから。こっち来てみ!」


小声でニヤニヤしながら手招きする彼に従い、静かに近づくと、僕のベッドがいっぱいになっていた。ジョセフが簡易電気を付け、真っ暗だった部屋に薄い明かりが灯る。


「承太郎も一緒なんてめずらしーっ。カメラ持ってくる!」


至極楽しそうなジョセフに苦笑しながら、それでも自分もとても幸せな気持ちになった。愛しい兄弟に息子、そして最早家族である愛しい親友。とても胸がいっぱいになった。スヤスヤと眠るそれは起きる気配がない。よほど疲れていたのか、安心しているのか。あ、涙出そう。


「ふっふーん、一眼レフー…ってジョナサン何で泣いてんのォ?」
「いや、何でもないよ」


いつの間に買ったのか、高そうなカメラを両手に構え、ジョセフは遠慮なくシャッターを切る。


「後で焼き増しを頼むよ」
「もっちろーん!ジョナサンならタダであげてもいいよーん」


それは売るつもりなのか、とは今は聞かないことしする。この幸せな空間をいつまでも眺めていたいと、そう思った。

140925
ベッドでかすぎだけど気にしたら負け
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