03.
翌日、また公園に行きたいと申し出たがしっかり断られてしまった。でも泣き倒したら折れてくれて、パッチが付き添いで来るということで落ち着いた。

昨日と同じ時間に公園に行くと、ベンチの近くにあの赤い髪を見つけた。隣には黄色い髪の見慣れない男の子がいた。パッチの手を離れて二人に近付くと、こちらに気付いたキッドが手を挙げた。


「スイレン!」
「きっどうわっ」


二人に寄るために走ると、途端に足が縺れて前に転んだ。え、何これデジャヴュ?諦めながら目をギュッと閉じて痛みを待つが、いつまで経ってもそれは来ない。代わりに腕を誰かに引かれて驚いて目を開くと、キッドの隣にいた金髪の子がわたしの腕を掴んでいた。


「だいじょうぶか?」
「う、うん。ありがと」
「いや」


え、この子本当に幼児?転びそうになった人を助けるとか紳士か。ていうかキッドもこの金髪くんもこの歳にしたら喋るの上手くない?言葉遣いとか。最近の子って皆そうなのかな…恐ろしい。


「きらー…おまえ、あいかわらずあしはえーな」
「ちかかったからな」
「おまえもきをつけろよ。きのうとおなじじゃねぇか」
「う…きをつける」


確かに金髪くんに助けて貰わなかったら昨日の二の舞だったわけで。危ない危ない、また地面とこんにちはなんて洒落にならない。

一人悶々としていると、不意に視線を感じて顔を上げる。途端に金髪くんと視線がバチッと合った。何か見られ過ぎじゃないか、居た堪れない。


「そうだすいれん、こいつはきらー。おれのともだちだ」
「きらー!」
「きらー、こいつがさっきいってたすいれんだ。な、がきだろ?」
「ちがいない」
「きっども、きらーも、まだこども!」
「ちがいない」


難しい言葉知ってんな、この子達。末恐ろしいわ。とりあえず金髪くんの名前はキラーというらしい。でも昨日皆近寄らないって言ってたけど、よかった理解者はいたようだ。ていうかずっと無視してたけどキラーの頭の上にあるあの仮面何だろう…。


「ぼーる、もってきたんだ。やろうぜ」
「やるー!」
「あぁ」


何か心なしかキッドが活き活きしてるように見える。ボールを持って駆け出す後ろ姿は昨日とは全く違う。少し考え込んでいると、キラーが小さな声で囁いた。


「きっど、たのしそうだ」
「?うん」
「あいつ、ずっとひとりぼっちだったんだ。おれはおまえくらいのときにひっこしてきて、きっどにあって。おれもよくめつきわるいとか、ぶきみだとかいわれるから、きっどのきもちはわかる」
「…さみしかった?」
「え?」
「さみしかったの?きっども、きらーも」


子供だからなのか、思ったことはすぐに口にしてしまうらしい。しまった、と慌てて訂正しようとしたが、その前にキラーが口を開いた。


「……そうだな、さみしかった、のかもな…」
「……でもきらー、ともだち」
「……あぁ」
「わたしも、ともだち?」
「…あぁ」
「じゃあわたしと、きらーと、きっどは、ともだち!」


あぁ、と苦笑だが優しく微笑んだ彼を見て、少しホッとした。嫌なこと聞いてごめんね、という意味を込めて、早くしろと叫ぶキッドの元へキラーの手を引いて駆け出した。


110310
夢主、キラーと仲良くなるの巻。夢主が二人に過去を話すのはもう少ししてから。とりあえず二人とは幼なじみ。
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