01.
あれから一年。何とか意思を伝えられるようになってきたこの頃。ダダンは何だかんだ言いながら心配性だし、周りの男の人達(部下?)は甘い。はいはいもできるようになったから身体を動かしたいのだけど、赤ん坊用のベッドに入れられなかなか動けない。


「(動きたい…眠くない…暇…)」


いつものお昼寝の時間には早いしご飯も食べたばっかり。そろそろどうしようもなくなってきた頃、わたしは行動を起こすことにした。

今日はダダンも出掛けているし、わたしのお守り役のパッチは目の前で寝ている。これはチャンス。短い手足を目一杯伸ばして立ち上がり、柵を跨いで床に足を伸ばした。


「(っあ、)」


手が、滑った。ヤバい、と咄嗟に取った受け身は見事に決まり、すたんと足を着いた。しかしすぐにこてんと後ろに倒れる。


「(あれー…?)」


身体が覚えているのだろうか。おいしょ、と身体を俯せの状態にし、パッチが起きていないのを確認してから静かに歩きだした(はいはいだが)。

改めて部屋を見渡すと、それなりに片付いたシンプルな物だ。子供部屋なんてものはなくわたしはダダンの部屋で過ごしている。そのせいで布団が敷かれたまま散乱しているのだが今日は片付けたらしい(大抵は散らかっていてマキノさんが叱るのだ)。

なぜか開いていたドアから出てよたよたと進んでいくと、台所にマキノさんが立っているのに気が付いた。どうやら昼食を作っている最中らしい。下宿所のような作りのここは台所が一つあり、二人組の一週間交代で料理を担当している。今日は皆仕事なのかマキノさんが作ってくれている。

それに見付からないようにそろりとそこを抜けると、廊下の奥に見慣れないドアを見つけた。他の部屋からは少し離れた場所にあるそれは、妙な威圧感を漂わせながら佇んでいる。


「(気になる)」


興味を引かれたわたしはドアに寄り掛かりながら立ち上がり腕を伸ばすが、当然ながら届かない。ぴょんと跳ねてみたがそのまま後ろに倒れてしまった。


「(何だろ…。誰かの部屋って訳じゃなさそうだし…、倉庫とか?)」


それなら納得だがそれはそれで気になる。宝探しは得意なのだ。それにこれはいい暇潰しになる。もう一度腕だけを伸ばすと、突然身体が宙に浮いた。びっくりして振り返ると、じいちゃんがわたしを抱えていた。


「これこれ。全くどうやって抜け出したんだ。とんだじゃじゃ馬娘じゃな」


じいちゃんは呆れながらもわたしを優しく抱え直し、ドアを指した。


「気になるのか?」


その問いに必死に頷くと、じいちゃんは少し考えた素振りをしてからわたしの頭を撫でた。んん?


「お前さんがもう少しでかくなったら、開けてやる。お前は頭がいいらしいからのう!」
「(わーい!)」


わたしは腕をパタパタと振って喜びを表した。伝わったみたいで、じいちゃんはまたわたしの頭を撫でてくれた。でっかいなあ、じいちゃんの手。

110304
下宿所の実権はガープが持ってる
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