01.
腹部への熱のような熱い痛みの後、目の前は真っ赤に染まり、周りにいた人間は一人残さず首を刎ねた所で記憶は途切れていた。

次に目を覚ました時、今度は全身に張り付く冷たい感覚と顔に当たる突き刺さるような水の塊の痛さを感じた。視界いっぱいに広がる鈍色が襲って来そうな気がして、不意に恐怖に駆られ声を出して泣いていた。


「お、ぎゃあああぁぁ」


すぐに違和感。赤ん坊、?え、うそ。


「あ、あ、おぎゃあぁぁ…」


赤ん坊の泣き声がわたしの口から発せられている。水気を含んだ衣類のせいで上手く身体を動かせないが、感じる感覚は短い。わたしは赤ん坊となって地に捨てられていた。恐ろしい程冷静だった。冷静だが絶えず泣く。何故泣いているのか分からなかったがとにかくひたすら泣いていた。

すると、不意に影ができて鈍色の空は見えなくなった。


「何じゃ騒がしい」


その声と共に慣れない浮遊感。驚いて泣き声は止んでいた。わたしを見下ろすのは厳つい、だけどどこか優しい顔をした男だった。


「お前さん、一人か」


その人はわたしの濡れた頭を優しく撫でる。それにじわりと胸が熱くなった。


「寒かったろう。もう大丈夫だ」


わたしは温もりに包まれたまま、ただただ涙を流した。それは赤ん坊だからなのか、それとも本心なのか分からないフリをした。

110228
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