02.
面倒な掃除の時間が終われば帰るだけだ。ゴミを処理場に捨て、一人ごみ箱を持って教室に向かう途中、階段の付近で騒がしいことに気付いた。そこには昼にトイレで話した彼女が数人のクラスメートに囲まれていた。教室で彼女を罵っていたメンバーだと気付き、またかと嫌気がさした。

わたしは柄になくいらついていた。彼女が虐められている理由を陰で聞いたからだ。彼女はただ厚い黒縁眼鏡に大人しい性格だからという理由だけで虐められていた。それだけなのだ、所詮子供の気まぐれ。


「(それでも、)」


ただ、中身が成人であるわたしは黙ってはいられなかった。不意に、黄色い髪をした血の繋がらない弟を思い出した。彼は陰で泣いていたじゃないか。わたしのいない所で罵られても、わたしが心配しないようにと笑っていたじゃないか。わたしは弟以外を見捨てるのか。そんな卑怯な人間だったのか。

違うと言いたい。違うと言える人間になりたい。目の前で起きていることが例え子供が起こしていることだとしても傷ついている子がいるのだ。わたしは、馬鹿だ。

眼鏡が取られ、彼女は見えないのか手を伸ばす。それを振りほどいた男子生徒は彼女の身体を押した。ぐらつく身体。後ろに斜めに傾いていく彼女を見た時、わたしの足は動いていた。


「たしぎ!!!」



**************



ふと意識が浮上し、まず視界に入ったのは少し染みのある白い天井だった。身体を起こすとじくりと全身が痛んだ。確か彼女が階段から落ち、その瞬間に瞬身の術で行き彼女を抱えて落ちたんだ。流石にこの身体では筋力は付いていないから庇うことで精一杯だった。元々丈夫だから、全身を打ち付けただけで済んだようで、関節等の不具合はない。

物音に気付いたのか、ベッドを仕切っていたカーテンが開いた。保健室の先生とわたしが庇った彼女が俯きながら立っている。


「具合は大丈夫?二人で階段を落ちたの。覚えているかしら?」
「はい。わたしは大丈夫です。ちょっといたいくらい」
「よかった。階段から落ちたのにその程度で済むなんて奇跡的よ。彼女も足を打っただけだったのよ」


よかった、大事には至らなかったようだ。念のために病院に行くことと、家に連絡を入れるからと言って保健室の先生は保健室を出て行った。気を遣ってくれたようだ。


「…足、大丈夫?」
「……っう、うん」


近くにあった椅子を指すと、彼女は戸惑いながらそれに座った。警戒しなくていいのに。それとも気にしているのか。


「……っごめんなさい!!」


突然彼女はボロボロと涙を零しながら叫んだ。眼鏡に雫が当たり流れる。何となく彼女ならするだろうと予想していたから驚きはしない。

わたしこそごめんなさい。呟くと、驚いた声がした。


「わたしは貴女が虐められているのを、他人事のように無視してた。それは貴女を突き落とした彼らと何ら変わりない、同罪だわ」
「そ…っ、そんなこと!みんなそうだもん、気にしてないよ!それに、わたしがどんくさいから、そう言われるんだよ。わたしがよわいから…」
「じゃあ、さ」
「?」


泣かせてごめん。手を伸ばして黒髪を撫でる。ねぇ、わたしも引けないことをしたの。貴女の傍にいたい。どうしてそう思うのかわからないが、きっと理由なんてないのだろう。


「強くなろう」
「つよ、く…?」
「そう、見返してやりましょう。虐められっ子の貴女は変わるの。自分の意思で動き、文句なんて言われないような、強い人に、一緒になりましょう」
「いっしょ…」
「ね?」


これはある意味罪滅ぼしなのかもしれない。それか昔あの子を守り切ることができなかったからか。でも、素直に友達になりたいという思いが強かった。


「うん…うんっ」
「よろしくね、たしぎ」
「!」
「わたしも名前、スイレンって呼んでね」
「うんっよろしくね、スイレン!」


ほら、笑顔が素敵。







(やーいでかめがね!)
(っで、でかめがねじゃないもん!たしぎだもん!)
(はぁ?めがねはめがねだろ!)
(ちょっと意味わかんない。貴方だって眼鏡じゃない。何が違うの?)
(え、お前…)
(ねぇ、何が違うの?)
(う…っ)

(…スイレン、目が…目がこわいよ…)
(あらあら。ごめんねー?)
(いっ、う、わあぁあ…)
(みんなにげてった…)
(あらあら)
((スイレンはおこらせないようにしよう))

110327
矛盾とか気にしないで…読んで頂けたらと思います。
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