01.
わたし、スイレンは子供めでたく小学生になった。周りは勿論同年代なわけだが、中身が二十歳を過ぎているわたしには少し辛い。キッドやキラー(特にキラー)は周りと比べたら話しやすかったし、家は大人ばかりだから気にしたことはなかったが、今回はそうも言ってられない。幼稚園では堪えたが、小学生は小学生の行動パターンがあるわけで。

つまり馴染めないでいた。入学から二ヶ月程経ったのだが、わたしはクラスの輪には入らず一人で読書をしている。前世は仲間はいても友達はいなかったから、苦ではない。一人は慣れていた。


「うわっでかめがねだ!」
「こっちくんな!」


ふと聞こえた声のする方を見る。男女数人が一人の女の子に向かって暴言を吐いていた。暴言かどうかはわからないがあの年齢には辛い筈だ。

彼女は黒髪に厚い黒縁眼鏡を掛けていて、それでいて大人しい。わたしと同じようにクラスに馴染めず本を読んでいた子だ。俯いて何も言わずに立ちすくんでいる。わたしはどうするか悩んでいた。出ていって彼女が何をしたんだというのか。いや、あまり意味はないだろう。相手は子供だ。他人にとって傷付くことを平気で言う。わからないのだ。

「(子供の嫌がらせは残酷だねー)」


直接下されるそれは見ていて逆に潔い。良いとは言えないが。そういうわたしも、結局見ているだけだから同罪であるのは変わりない。



**************



早く家に帰りたい。家に帰ればルフィが、エースとサボは幼稚園だがいる。彼らと一緒にいた方が、学校より断然楽しい。トイレで手を洗って出ようとすると、啜り泣きが聞こえた。奥の個室かららしい。そうか、さっき入ってきたのは彼女か。


「…っく、ぅっ……」


不意に啜り泣きが止み、個室のドアが開いた。まさか出てくるとは思わなかったからわたしは動けなかった。彼女も、まさか人がいるとは思わなかったのだろう、ビタリと動きが止まった。静寂がトイレを包む。いたたまれなくなって、とりあえず口を開いた。


「あの…さ、」
「………」
「(どうしよう…。あ、そうだ)」


ポケットから飴を取り出して彼女に渡した。キョトンとして飴を凝視している。そのまま彼女の頭を撫でて、あれ、ていうか飴って…


「(飴って何やってんのわたしいいい!?子供じゃあるまいししかもわたし今この子と同い年じゃないの…!!)」


つい、そのまま子供を相手にするように接してしまった。どうしよう、これイジメと大差ないんじゃないかな、ある意味馬鹿にしてるのと同じなんじゃないの…!?

どうしようかと内心混乱していると(顔には出さないが)、飴を凝視していた彼女が不意に笑った。


「……はは、かわってるね、スイレンちゃん」
「!!名前、」
「しってるよ。としょしつによく行くでしょ?」
「あ、うん」


そういえば彼女もよく図書室にいる。クラスメートだし、わたしも勿論名前を知っているけど。


「ありがとう、スイレンちゃん。げんき出たよ」
「そう、よかった。あめならいっぱいあるから、いつでも言ってね」
「あははっ!うん!」


彼女は赤い顔で可愛らしく笑い、去って行った。いい子だなあ。何で虐められるんだろう。彼女が気になる。


110326
続きます。
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