鬼灯 | ナノ



今日は六年生の授業の日で、何やるのかなーとか呑気に考えていたら女装だった。女装して二人で組んで男引っ掛けて物奢らせたら合格。奢らせる物によって評価は違うらしい。確かくのたまの授業でもこんなかんじのがあったなあ。わたしはというと、変化の術で男に変装中である。元の顔は一応女だから念のためだ。わたしは皆の経緯を見守るために行く、所謂監察役。

学園の前で生徒を順番に見送っていると、明らかに異様のオーラを漂わせる団体が来た。絶世の美女から男丸出しまでいる。


「これは…また…」
「?どちら様ですか…?」
「あら仙子さん。御機嫌よう」
「!椎蓮さん…」
「ふふ、仙蔵は流石ね。伊作も可愛いよ。問題は…」


後の四人。留三郎は何とかごまかしてるみたいだけど、小平太は化粧が雑だしがに股。文次郎と長次は壊滅的…。


「予想はしてたけどねぇ…(去年より酷いわ…)」
「う…」
「小平太、こっち来て」


小平太の顔を布で軽く拭き、紅をわたしの使っている薄い物にした。それから崩れた髪を梳かして頭巾を巻き直した。


「はい完了」
「うわ…!小平太が普通…!」
「仙蔵、普通て」
「君達は化粧が濃すぎるのよ。遊女だってそんなにしないわ」
「ゆ、遊女…」
「さあさ、次は留三郎ね」


こちらもわたしなりに手を加えたら気の強そうなお姉さんになった。…羨ましい。問題は文次郎と長次だ。


「仙蔵、文次郎に化粧を教えてあげた?」
「去年教えてそれきりですよ」
「あら、じゃあほぼ自己流なのね」
「はい…」
「基本はできてるみたいだけど…」


懐から紙を取り出し紅を少し拭いた。それから隈を目立たせないように下瞼の下に白粉を薄く塗る。わたしなりに色々付け加えて鏡を見せると、町娘…というよりお母さんは目を見開いた。


「これが…俺…」
「文次郎が別人だ!」
「文次郎は(何とか)応用が利くから、覚えちゃえばちょっと逞しい普通の女の子になるのよ。声は変えられないから、仙蔵にフォローしてもらってねー」
「はい…」
「…椎蓮さん」
「おっけー」


長次は髪の毛で顔の大きさをカバーして、傷は白粉で何とかごまかした。体型は仕方ない。


「おお…!」
「何か母親みたいだな…」
「文次郎、お前が言うな」
「何だと!?」
「あぁ!?」
「はいはいやめなさいねー。早く行かないと減点するよー」
『はっ!?』


それを聞いた彼らは顔色を変え、慌てて門から出て行った。後ろ姿は何とも言えない。


「椎蓮先輩も行くんですかー?」
「ええ。監察だからねー。女装の授業なんて久しぶりだから楽しみだよ」
「いいなー…僕も町に行きたい」
「じゃあ今度行こうか」
「え、ホントですか!?」
「ええ。今度のお休みにでも行こう」
「はいっ」


朗らかに笑う後輩に笑顔を向けてから、わたしも学園を出た。この授業も楽しみだけど、秀作と出かけるのも胸が弾む。いってらっしゃいという声がとても心地好かった。


実習の結果、仙蔵が見事一番になった。文次郎はボロを出してしまったのは言うまでもない。
110206
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